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錦織健プロデュース・オペラが人気な訳

日本を代表するオペラ歌手・錦織健がライフワークとして取り組むオペラ企画は、客からも出演者からも好評。果たしてその訳は? 錦織ならではな企画・運営の創意工夫を公演の見所と共に紹介します。

大塚 晋

執筆者:大塚 晋

クラシック音楽ガイド

錦織健プロデュース・オペラ、
第6回目はモーツァルト『後宮からの逃走』!

錦織健

「企画や宣伝は楽しい。キャスティングも楽しい」座長の錦織健さん

日本を代表するオペラ歌手であるのは言うに及ばず、TV番組出演など、マルチな才能で広く知られる錦織健。彼がライフワークとして取り組んでいるのが、自ら座長を務める『錦織健プロデュース・オペラ』シリーズです。2002年にスタートし、今回2015年2月~3月に行われる全国公演が第6回目。今回はこれまた気合の入った公演ということで記者発表会が開かれ、行ってきました。

コンセプトは『旅のオペラ一座』で「多くの方にオペラを身近に感じてほしい。また日本の歌手で行う。日本人は声量など、西洋人と比べてキツい部分もあるが、スポーツで日本人は世界で活躍できている。同様に、日本人の歌手はチームワークが良いので、アンサンブル・オペラ(ソロより重唱に比重があるオペラ)で勝ち目がある」と錦織さん。なるほど、しごく納得です。

これまでにモーツァルト『コシ・ファン・トゥッテ』『ドン・ジョヴァンニ』、ロッシーニ『セビリアの理髪師』、ドニゼッティ『愛の妙薬』の上演を行ってきており、今回はモーツァルト5大オペラの一つ『後宮からの逃走』。

この選曲については「人数を多く必要とするグランド・オペラは無理なので、登場人物が少なく、技のスキルが活かせるもの。そして、どうしても喜劇をしたい。『笑いでオペラの垣根を取り去る』というポリシーの下、毎回喜劇を選んでいます。今回はコロラトゥーラ・ソプラノの大スター佐藤美枝子さんを迎えることができたので、超絶技巧の要求されるこのオペラにしました」とのこと。
佐藤美枝子

「錦織オペラに参加するのが長年の夢だった」という佐藤美枝子さん

その佐藤美枝子さんは、第11回チャイコフスキー国際音楽コンクール声楽部門で日本人初の第1位となった日本トップクラスのソプラノ。以前より「内容の濃い稽古で良いと聞いていて参加したかった。今回歌うコンスタンツェ役は難しい役だが念願。気合を入れてがんばりたいです」とのこと。

今回は歌はもちろんドイツ語(日本語字幕付き)ですが、歌の合間の台詞の部分は日本語で行うというのも嬉しい点。ブロンデ役の市原愛さんも「台詞まで字幕を追って、面白いところを見逃さないですみます」、太守役の池田直樹さんも「リアルタイムで笑いが来るから良いですね」と。
市原愛

「自分はブロンデ役が合うと思っていた」と意気込みを語る市原愛さん

ストーリーは、トルコを舞台に、青年貴族が太守のハーレムに捕らわれた婚約者を何とか救い出す、というもので、当時流行していたトルコの異国趣味ある軽快な作品。

錦織健さんが考え抜いた楽しい上演である上、幅広いエリアで公演予定があるのも嬉しい点。

と、公演の案内としてはここまでなのですが、記者会見ではこの錦織健さんプロデュースのオペラがどれだけ歌手にとって貴重であるかも伝わってきたので記します。

まず、歌手が主導するメリットとして、稽古時間の拘束が厳しくない、ということがあるとのこと。上演前の2カ月は他の公演に出てはいけないという歌手にとっては辛い契約が多い中、このプロジェクトでは、通し稽古をたとえプリマ(主役歌手)が休んでもOKとのこと。錦織さんは「それだけ人気の方を呼べるのは、迎えた方にとっても名誉」と話し、さらに「通し稽古にカバー(控えの歌手)を出すことでカバーも育つ」とのこと。

佐藤さんは「1役を2回くらいしか歌わせていただけないことが多く、それだとレパートリーとなりえないのですが、今回8回歌わせていただけることはどれだけ糧になるか」と話し、池田さんも「多くの場合、初日で緊張し、2日目で反省点を見つけても、3日目がない。健ちゃんのオペラ以外ではなかなか経験できないのです」と。
池田直樹

「毎回プロジェクトが終わると、私の家で食事会を開いていて今回も楽しみ」と語る池田直樹さん

市原さんは「錦織さんから直接お電話をいただき、熱い思いを感じ、参加させていただくことにした」と話し、池田さんは「4度目の出演をさせていただきますが、健ちゃんはみんなが気持ち良くできるようにといつも考えてくれていて、コーラスの一人ひとりも丁寧に見ている。先輩も大事にし、驕ることもない。毎回プロジェクトが終わると、私の家で食事会を開いている今回も楽しみ」と、錦織さんの真摯な姿勢や、プロジェクトの雰囲気の良さも伝わってきます。

一流の歌手がそんな皆が皆、絶賛する環境で生み出されるオペラ。ぜひお見逃しなく!

■スケジュール 公式ページはこちら
2015年2月22日(日)サンシティホール(越谷)  TEL:048-985-1112
2015年2月25日(水)静岡市民文化会館(静岡) TEL:054-281-9010(静岡新聞社・静岡放送 事業部。チケットは、ぴあ TEL:0570-02-9999 Pコード239-975)
2015年3月1日(日)栃木県総合文化センター(宇都宮) TEL:028-643-1013
2015年3月7日(土)神奈川県民ホール(横浜) TEL:045-453-5080
2015年3月13日(金)東京文化会館(上野)  TEL:03-5774-3040
2015年3月15日(日)東京文化会館(上野)  TEL:03-5774-3040
2015年3月22日(日)フェスティバルホール(大阪) TEL:06-6341-0547
2015年3月24日(火)福岡シンフォニーホール(福岡) TEL:092-711-5491(西日本新聞イベントサービス。チケットは、アクロス福岡チケットセンター TEL:092-725-9112)
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