テレビドラマの映画化はワクワクします。今回は刑事ドラマに絞り、映画化される魅力とその難しさに迫ります。

映画化によって広がる世界観

事件解決がメインテーマとなるテレビドラマに対して、映画では登場人物の背景を掘り起こし、巨悪な組織(警察のこともあります)を追うのが常套。そこにはいくつもの壁が立ちはだかります。「この件から手を引け」といった圧力、時間の制約(主人公が定年になるとか、爆弾が仕掛けられているとか)、裏切、隠蔽、トラップ……。それらの謎解きをギュッと詰め込むことが映画化の醍醐味ですが、それだけでは支持されません。


■映画展開のモデルとなった『踊る大捜査線』シリーズ
1997年1月~3月 フジテレビ系列にて放送

何本もの刑事ドラマが映画化されていますが、先駆者となったのは『踊る大捜査線』シリーズです。「あだ名で呼び合わない」「被疑者確保の表現」など、より現実に近い演出と洒落っ気のある台詞が評判となり、パターン化された刑事ドラマに風穴をあけたと言えます。スペシャルドラマ、スピンオフ、そして映画と展開を続ける”踊る”は間違いなく みんなをワクワクさせてくれました。謎解き以外にも人間模様や公務員的側面を、時に的確に 時に面白く描いたことも人気の理由と言えるでしょう。

スピンオフ作『交渉人 真下正義』や『容疑者 室井慎二』のように、主人公が変わり 監督や脚本家が変わっても、それぞれが”踊る”の持つユーモアのリズムや軽やかさ、リアリティーの空気を維持しながら、作品の個性を確立し支持されたことは驚異と言えます。監督や脚本家が変わることで、評価を下げてしまうケースもあるからです。”踊る”はちょっとした変化が”楽しむべき要因”として歓迎され、制作側の愛とファンの愛がうまく協和した恵まれた作品と言えます。


 
 

■アクションの神髄を魅せる 『SP 警視庁警備部警護課第四係』
2007年11月~2008年1月 フジテレビ系列にて放送


作品の魅力がジワジワと浸透した『SP』は、深夜ドラマに新しい風を吹き込みました。岡田准一演じる主人公の井上薫は特殊な能力を持つSP。ドラマのコアとなるアクションは、編集に頼らない本物の技術がスピードと躍動感を生み、息つく暇がありません。アクション時の”どや顔”もリプレイもない真っ向勝負が作品の圧倒的な強みと言えるでしょう。

映画『SP THE MOTION PICTURE 野望篇』での、井上薫と丸山智巳演じるテロリストとの格闘はなかなか決着がつかず、ドラマ以上に視聴者を緊張感から解放してくれませんでした。優勢と劣勢が激しく入れ替わる全身を活かしたアクションの迫力を維持し続けた映像にするには、大きなスクリーンと十分な時間が必要で、映画化するべき作品だと言えます。信念、葛藤、決意といった心理も映画化によって強化され、アクションとともに観客にグッと迫ることに成功しました。

ドラマの監督はエンターテインメントの面白さを知り尽くした本広克之(『踊る大捜査線』シリーズ)、映画ではスリリングな映像を得意とする波多野貴文(『ブラッディ・マンディ』)が担当。ともに完成度が高いことに頷けます。