ローマ時代の様子を鮮明に伝える地下宮殿
世界的にも大変保存状態の良いローマ遺跡と言われる「地下宮殿」
今から約1700年前、皇帝が静かな晩年を過すために築いたディオクレティアヌス宮殿。当時、皇帝は海が見える宮殿の南側に暮らし、北側には皇帝に使える兵士や使用人のための住居が並んでいたと考えられています。
お土産屋さんがたくさん並ぶ地下道
実は“地下”宮殿と呼ばれているこのスペース、わざわざ地面を掘って地下に作られたものではなく、もともとは地上に建っていたと考えられています。宮殿が建設された当時、このあたりの土地は海に向かってなだらかに傾斜していたそう。そのような土地に、できるだけ海の近くに宮殿を建てるべく知恵を絞ったローマ人。海に向かって土地が下がる南部分の建物を数層に分けて高くすることにより、北部分の建物と高さを併せ宮殿の上層部を水平に保ったのです。
ディオクレティアヌス宮殿復元予想図
ところで、皇帝の死後、廃墟と化していたこの宮殿に人々が住み着き、廃材などを利用して宮殿内に町を作ったのが今のスプリットの街の起源となったのは有名な話。そんな宮殿跡はローマ時代の面影は残っているものの、長い歴史の中で、宮殿に住み着いた人々の手により破壊、増築、改築などが行われ、地上部分は建設当時の構造とは随分異なる様子をしています。一方、地下宮殿は建設当時の構造をそっくり反映していると考えられていますが、それは層となった建物の上部をしっかりと支えるために下層部を上層部と同じ構造にする必要があったため。地中に埋もれていたために保存状態がとても良く、ローマ時代の様子を現代に伝える貴重な遺産として人々の注目を集めています。