1600mの距離で、秋の王者を決める
「マイルチャンピオンシップ」
“マイル戦”と呼ばれる、1600mのレース。競馬において短距離にあたるこの1600m戦線でも、秋の王者を決めるべく、11月にG1レースが行われます。それが、マイルチャンピオンシップ。そのものズバリなレース名ですね。このマイル戦でも、やはり秋は「3歳VS古馬」の対決が生まれます。3歳馬は春にNHKマイルカップ(芝1600m、東京競馬場)というG1レースを戦っており、そこで「3歳マイル王」となった馬が、今度は全世代におけるマイル王を目指すわけです。
2004年のマイルチャンピオンシップでも、「3歳VS古馬」の白熱した戦いが繰り広げられました。
このレースで1番人気に推されたのは、昨年の覇者デュランダル。ほぼ最後方に位置し、直線だけで一気に他馬を抜き去る同馬の追い込みは、「名刀の切れ味」と称えられました。そのデュランダルが連覇を狙うのですが、ここに悠然と立ち向かった3歳牝馬がいました。それがダンスインザムードです。
ダンスインザムードは、兄姉にG1馬がいる日本屈指の良血。その血に恥じぬレースぶりで、春に3歳牝馬のG1桜花賞(芝1600m、阪神競馬場)を制覇。その後、古馬相手のG1でも好走し、マイルチャンピオンシップで打倒デュランダルに名乗りを上げます。
2004年マイルチャンピオンシップのレース映像(デュランダルは青帽の7番、ダンスインザムードはピンク帽の15番)
先に抜け出したダンスインザムードに、襲いかかるデュランダル。しかし、とにかくデュランダルは強かった。「マイル王は譲らない」とばかりに、一気にダンスインザムードをとらえて連覇を達成しました。そして私は、この3歳VS古馬の真っ向勝負に清々しさを感じたものでした。
女の意地をかけ、チャンピオンの座を争う
「エリザベス女王杯」
世代限定の三冠戦を戦ってきた3歳牝馬たち。10月のG1秋華賞(芝2000m、京都競馬場)でその戦いが幕を閉じると、彼女たちは年上の牝馬たちと「女王」の座をかけて競います。その舞台になるのが、エリザベス女王杯。こちらもジャパンカップやマイルチャンピオンシップと同じく、牝馬ナンバーワンをかけた「3歳VS古馬」の戦いが見もの。勢いに乗る3歳馬か、歴戦の古馬か。牝馬同士の対決というのは、これはこれで見どころがあります。
2010年のエリザベス女王杯は、この年の三冠を総ナメした3歳牝馬のアパパネが参戦。男勝りのレースを見せる古馬のメイショウベル―ガなどに挑みます。しかしもう一頭、ここには注目すべき3歳牝馬が参戦していました。それが、イギリスからやって来たスノーフェアリー。なんとこの馬、本場イギリスとアイルランドのG1オークスを、ダブルで制したツワモノ。牝馬同志の「3歳VS古馬」の図式は、スノーフェアリーの参戦により、世界規模の戦いとなったのです。
とはいえ、海外の馬が日本でレースをする場合、ヨーロッパとは違う「堅くてスピードの出る日本の芝コース」に戸惑って力を発揮できないケースなどもあるもの。しかし、スノーフェアリーはすごかった。個人的に一生忘れられないレースです。どうぞ、競馬ファンの度肝を抜く走りをご覧ください。
2010エリザベス女王杯のレース映像(スノーフェアリーは赤帽の6番)
一頭だけまったく違う加速力を見せての圧勝劇。「これがヨーロッパの3歳女王か……」と驚愕した覚えがあります。そして翌年、スノーフェアリーは「古馬」としてふたたびこのレースに出走します。
このときは、直近の秋華賞を制した3歳のアヴェンチュラが出走。年上の世界的名牝に挑みます。しかし、やっぱりスノーフェアリーは強かった。
2011エリザベス女王杯のレース映像(スノーフェアリーはピンク帽の18番、アヴェンチュラは白帽の1番)
スノーフェアリーは、3歳4歳と見事に連覇を達成。完璧なまでの強さを見せつけて女王の座を守ったのでした。ですが、私は3歳馬として果敢に挑んだアヴェンチュラの姿も記憶に残っているのです。
若き3歳馬とベテランの古馬がぶつかり合う、11月のG1レース。世代の意地を賭けた全力の戦いを楽しんで頂ければと思います。
(リンク)
11月のレーシングカレンダー|JRAウェブサイト
ジャングルポケット|競走馬データ‐netkeiba.com
デュランダル|競走馬データ-netkeiba.com
スノーフェアリー|競走馬データ‐netkeiba.com