高齢化は進めど確立されない事業承継
このように高齢化が進む行政書士ですが、いずれは事務所をたたまないといけません。その際は、長年の付き合いのある自分の顧客に他の行政書士を紹介するという事業承継が行われるはずです。私の知る限り、税理士には慣習的な事業承継の方法があります。例えば、自分が引退をするときに、自分の事務所で働いている税理士に顧問先を引き継がせるかわりに、その後の数年間、得た報酬の一部を支払ってもらうというようなことです。
しかし、行政書士の世界ではこのような事業承継の方法や相場を耳にしません。それは、行政書士は一人事務所が多く、事務所内で事業承継が生じないからだと思います。
事業承継と行政書士法人
一方で、行政書士間で確実に事業承継がされる事務所があります。親子で行政書士をしている親子事務所です。これも高齢化に伴う事業承継のひとつの形です。そこでクローズアップされるのが行政書士法人です。話は少し変わりますが、病院は医療法人が多いと思いませんか。個人病院レベルの病院でも法人化しています。税法上のメリットもあるようですが、親から子への事業承継も目的のひとつのようです。
許認可一般にいえることですが、個人が取得した許認可は、たとえ親子といえども承継できません。子は新たに許認可を取得するのが原則です。しかし、法人が取得していれば、新たに許認可を取得することはありません。もちろん一定の変更手続きは必要ですが、それでも、新規取得するよりは時間もお金もかかりません。ですから、法人化するのです。法人化は事業承継のための一般的方法です。
行政書士法が改正されて法人化が可能になりました。しかし、事業承継をにらんで行政書士法人にしている親子事務所は、それほど多くないように思います。行政書士法人の方にお話を聞くと、法人の会費と行政書士個人の会費を二重に払う必要があり、個人事務所と比べてもあまりメリットはないと聞いたことがあります。
このように行政書士においては、親子間の事業承継の方法として、法人化はあまり行われずに、共同事務所という形で事業承継がなされているようです。
今後の展望
今後、行政書士の高齢化はますます進んでいきます。しかし、以上のように、行政書士の世界では事業承継の方法が確立されていません。これは顧問先や顧客にとって好ましいことではありません。例えば、突然、行政書士の先生が倒れてしまい、他の先生にお願いするにしてもどうしたらいいかわからないなど……。実際、事業承継には、報酬の取り分の問題、名義貸しの問題、損害が発生した際の顧客対応のなど様々な問題が潜んでいるのです。とはいえ、これだけ多くの問題があるということは、事業承継のマッチングをうまくできれば、それはそれでひとつのビジネスになると思います。
さしあたっては、行政書士間でグループをつくり、不測の事態に備えての取り組みを事前に構築するべきでしょう。そのグループの存在を依頼者に伝えておく必要もあります。このような仕組みが定着していけば、グループ間内において少しずつ事業承継の形が出来上がっていくと思います。
結局、行政書士の高齢化問題も一般の高齢化問題と同じく、みんなで支え合っていくしかないのではないでしょうか。