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君は「ベイブルース」の伝説を知っているか?

10月31日(金)より、角川シネマ新宿、TOHOシネマズなんば他で全国公開される、実在した漫才師を描いた『ベイブルース~25歳と364日~』。ベイブルースのツッコミを担当していた高山トモヒロが監督初挑戦ながら、見事に撮り上げました。今回は笑えて泣ける感動作に迫ってみたいと思います。

広川 峯啓

執筆者:広川 峯啓

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芸人監督でもあなどるなかれ

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芸人が映画監督をやることが、それほど珍しくない時代になりました。その中には、持ち前の才能を発揮した作品も少なくありません。ただ、この『ベイブルース~25歳と364日~』ほど、芸人が映画を撮る意味を強く意識させられた作品はなかったように思います。

タイトルの「ベイブルース」とは、80年代の終りから90年代にかけて、上方漫才の世界に新風を吹き込み、将来有望な若手として注目されたコンビ。しかし、ボケを担当していた河本栄得が93年に25歳と364日の若さで急逝。残されたツッコミ役の高山トモヒロが20年以上の時を経て、映画制作にチャレンジしました。監督という形を借りて、自分達の「青春時代」を描いた異色作品なのです。

ベイブルース、高山を演じるのは波岡一喜。河本役は趙民和。2人の出会いは、高校時代の野球部にまでさかのぼり、映画の中でも坊主頭で熱い演技を見せています。青春時代に抱いた夢を、彼らは最後まで追い求めていたことが分かる印象的なシーンでした。

いい意味で「うっとうしい」

作中で、高山が河本のことを何度も「うっとうしい」と言う場面があります。そういった意味で言えば、この映画自体「うっとうしい」作品です。スタイリッシュな演出とか、斬新なカメラワーク、意表をつくストーリー展開などはありません。しかし見終わった時には、そういったことは一切気になりませんでした。

映画としての完成度を高めることよりも、ベイブルースという漫才師がいたという事実を、より多くの人々の脳裏に刻み付けたいという思いの実現。ここに監督・高山トモヒロの手腕が発揮されていたように感じます。

2人の青年がもがき苦しみながら、上方漫才の世界を駆け上ろうと奮闘する姿を、素直に描く。技巧を凝らした演出などなくても、面白い映画は作れるんだと、『ベイブルース~25歳と364日~』は教えてくれます。
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