書き方が違うだけで意味も使われ方も同じ字がある
花と華は意味も読み方もまったく同じ字
A: 書き方が違うだけでまったく同じ字です。このような漢字は他にもありますが、ふつうは永い年月の中で意味に違いが出たり、正字、異体字と分けられたり、新字、旧字と分けられることが多く、花と華のようにまったく意味も使われ方も同じというのはめずらしい例です。どちらも名前に支障のない字です。
漢字の中には、同じ字だか別の字だか分かりにくいものがよくあります。これは次のように大きく二つのケースに分けてみますとわかりやすくなります。
漢字は同じ字でも書き方が何通りもある
第一のケースは、同じ字で書き方だけが違うというものです。私達になじみがあるのは、いわゆる新字と旧字でしょう。その中でも「桜と櫻」、「竜と龍」、「万と萬」などは、新字も旧字も名前に使えます。一般論としては旧字は社会生活で使いにくく、新字にしておけば無難だと言えますが、龍の字に限っては旧字の方が見た目も良いのでどうしてもこれを使いたい、という人も多いようです。また坂本竜馬のような歴史上の人物の名前はどう書けば正しいのか、という問題も出ます。ご本人は「龍馬」という字を書いていたはずで、後世の人が勝手に字体を変えて「竜馬」と書くのは正式と言えるのか、ということです。これは人によってさまざまのご意見があるでしょう。
その他、名字によく使われている字でも、たとえば「峰と峯」、「園と薗」、「野と埜」などのように、同じ字に複数の書き方がある場合があります。これらはどれか一つが正字と決められ、それ以外の書き方は異体字と呼ばれたりします。ただ正字と言っても「正しい」という意味ではなく、一つを選んで一応標準の字と決めた、というだけです。しかも名字は先祖から永く伝えられたものであり、異体字だから明日から正字を書きましょう、などと簡単にはいきません。
同じ絵から別の字になったものもある
第二のケースですが、これは太古の象形文字では同じような絵を描いていたものが、後にまったく別の字に分かれて使われたもので、学校でもはっきり別の字として教えられます。その中で「華と花」だけは全く同じ意味で使われてきた珍しい例ですが、意味も読み方も同じならわざわざ二つの字を作る必要は無かったのではないか、とも言えそうです。
その他、もとが同じような絵だったのが別の字に分かれたものは、「水と川」「刀と刃」、「足と正」、「未と末」、「月と夕」、「母と毎」、「亨と享」「鼎と真」「束と東」「矢と寅」「合と今」「令と命」などたくさんありますが、これらは意味も違う意味で使われてきています。