転機になった作品
『セイムタイム・ネクストイヤー』と『白い巨塔』
1985年に初演された加藤健一事務所『セイムタイム・ネクストイヤー』への出演。お互い家庭を持っている男女が、毎年同じ日に同じモーテルで逢うというシチュエーションが2幕6場で描かれたアメリカの舞台作品です。加藤健一さんと演じたこの二人芝居は大評判となり、それまで”上手いけど真面目すぎて面白みがない”と言われることも多かった高畑さんはコメディエンヌとしても高く評価されるようになっていきます。『セイムタイム・ネクストイヤー』が上演された本多劇場
こうして所属する青年座の舞台に加え、外部出演のオファーも増えて更に活躍の場を広げる高畑さん。そんな彼女が舞台を観ない人達にも広く認知されるようになったのは16年に亘る『3年B組金八先生』へのレギュラー出演と、ご本人曰く”このドラマで女優として食べていけるようになった” 『仮面ライダーBLACK RX』悪役・マリバロン役での戦隊もの進出、そして2003年のフジテレビ『白い巨塔』 で東教授夫人・政子を演じた事が大きいのではないでしょうか。
特にくれない会の副会長・東政子の何とも言えないざぁます口調とテンションは大きな反響を呼び、「あの人は誰?」とネットの世界でも話題急上昇。この後も高畑さんは自身初の主演作となるNHK『魂萌え!』等、視聴者に強い印象を与える役を次々に演じていきます。
ガイドが特に印象深かったのは様々な”母親”の姿を描いた2010年のドラマ『Mother』。この中で高畑さんは田中裕子さんと共演する訳ですが、お二人は1歳違いのほぼ同い年。文学座の田中さんと青年座の高畑さんは同じ新劇畑と言う事もあり、若い頃に同じ現場やオーディション会場で顔を合わせたこともあったでしょう。高畑さんが500円のスイカを買うのに何時間も迷っていた20代の頃、田中さんは国民的ドラマ『おしん』で大ブレイク。その活躍ぶりを高畑さんはどんな思いで見つめていたのか……。
当時飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍し、沢田研二さんとの結婚を機に仕事をセーブしていった田中さんと、地道に舞台での活動を続け、次第に多くの人に実力を認められ支持されて行った高畑さん……そんな2人の女優が50代になり、互いに生きてきた時間を背負いながら、同じ画面の中で最高&互角の演技を魅せる姿は感動的でした。
勿論、ドラマだけでなくホームグラウンドである舞台でも大活躍! 宮本亜門氏演出のミュージカル、商業演劇、井上ひさし作品と様々なジャンルの舞台に参加し、2013年には読売演劇大賞 最優秀女優賞と菊田一夫演劇賞 大賞という演劇界のビッグタイトル2つを手にしています。藤山直美さんと漫才コンビを演じた『ええから加減』東京公演のチケットは即完売。全国公演でも大評判を取りました。
カメレオンのように姿を変え
庶民的なモードで視聴者のハートを掴む”大人力”
高畑さんが現在も所属する劇団青年座
実力はあるのになかなか周囲に認められなかった20代から女優として次第に花開いていった30代、そして舞台以外の現場でもブレイクを果たし、ドラマやバラエティでも活躍するようになったアラフォー以降とクレッシェンドな道を歩む高畑さん。舞台やドラマでは演じる役柄によって髪型、メイク、服装などの外見から声のトーン、まとう雰囲気までガラッと変え、スパっとその役を生きる姿は本当にカッコ良い! バラエティで見せるハイテンションでありながら視聴者が「あるある」と頷いてしまう庶民的な感覚や、明るく場を進行していく司会者としての仕事振りからも計り知れないポテンシャルを感じます。
若い頃から舞台でしっかり足場を築いてきた俳優さんが、45歳を超えて映像の世界でもブレイクすると強いですよ。実力に加え人生経験と演技者としての引き出しもガッツリ秘めてドラマや映画の世界に参戦するのですから。
まずは『ドクターX』鉄の白木師長と『きょうは会社休みます。』の母・光代をじっくり観て”演劇界のドラマクイーン”高畑淳子さんの演技の違い、是非チェックしてみて下さい。その演じ分けにあなたも目からウロコがポロっと落ちるはずです。