子どもと秋を味わい尽くすために! 『拾って楽しむ紅葉と落ち葉』
子どもはいつだって面白いものを見つける天才です
けれど、時に子どもから発せられる「これ、何の葉っぱ?」に、ことばを失ったことのある方も多いはず。そんなときに大活躍するのが、『拾って楽しむ紅葉と落ち葉』です。
紅葉の表情についてこう語るのは、『拾って楽しむ紅葉と落ち葉』(平野隆久・写真、片桐啓子・文、山と溪谷社)。秋を彩る落ち葉や木の実から、紅葉のしくみや拾った落ち葉が土に帰るまでを紹介している本です。
「落ち葉を拾うと同じ木でも表情が1枚1枚ちがう。重なりあっていた葉っぱにもそれぞれの人生があったのだ。」
落ち葉の名前を知りたいとき何よりうれしいのは、ほぼ原寸大の写真がふんだんに載せられていること。拾ってきた葉っぱを並べて比べることができます。木の種類についてある程度あたりがつく葉であればあっという間に分かりますし、全く分からなくても、写真が大きいのでパラパラめくっているうちに見つけることができます。
子ども向けに作られた本ではないのでルビはありませんが、植物の名前は全てカタカナで書かれているので、小学校低学年くらいから落ち葉の名前を調べることができます。B5ノートよりも少し大きめで薄手であるため、開いてパラパラめくるのも簡単です。クイズや宝探しなど、見つけるのが大好きな子どもたち、「みっけ!」の元気な声を聞かせてくれますよ。
ムカゴご飯の日に、ヤマノイモを見せてあげるのもいいですね
また文章も、「[実もかわいい]ハナミズキの仲間」「[街角でそびえる]ケヤキの仲間」といった、木の特徴を捉えたタイトルをはじめ、「旅路の果ての輝き」「恐竜の時代に栄えた木」など短いながら丁寧に書かれた解説などがどれも分かりやすく、お子さんに話してあげるのにぴったりです。
イロハモミジや桜紅葉に押されてか普段見落とされがちな、あまり目立たない常緑樹の紅葉や、ワラビやドクダミなど草もみじについても触れられているので、道を歩くときの見所が増えそうなのもいいですね。
子どもに話してあげてほしい、穴あき葉っぱと落ち葉のその後
レースのような葉脈標本の作り方も掲載されています
穴あき葉っぱで面白いのは、穴の形で葉を食べた犯人が分かるということ。当たり前といえば当たり前なのですが、落ち葉を見て、何の虫が食べたのかなと思ったことがなかった方も多いのでは? 虫好きのお子さんにもピッタリの話題だと思います。
そして、ぜひ子どもたちに知ってほしいこと。それは、落ち葉のその後について。
物語ではなく、感傷的な文章がついているわけでもないのに、植物の「命」を感じさせるのは、葉っぱに人生があると捉えたこの本の特徴だと言えるでしょう。放っておいても目に飛び込んでくる鮮やかな花やかわいらしい実に比べ、地味な葉。その葉が美しく紅葉し、また土に帰るという自然の仕組みの見事さは、ぜひ、子どもたちにも知っていてほしいと思います。折に触れて、話してあげてくださいね。「木々は毎年大量の葉を落とす。それでも森が落ち葉で埋まったりしないのは、ミミズやダンゴムシ、カタツムリ、甲虫の幼虫などがもりもり食べ、大量のカビやキノコ、バクテリアがせっせと分解しているため」
秋を楽しむ傍らに、ぜひ置いていただきたい1冊です。
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