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ジャニーズ事務所の演劇「裏」事情~彼らが輝く理由~(2ページ目)

ドラマやバラエティでその姿を見ない日はないジャニーズ事務所のメンバー達。でも彼らが輝く場所は、実はテレビの中だけではないのです。今回は正統派の舞台からかなりきわどい作品まで、ジャニーズ事務所所属のメンバー達が出演する”演劇”=台詞中心のストレートプレイに焦点を当て、その歴史や演劇界との関わり、高い評価を得ているメンバーをご紹介していきましょう。

上村 由紀子

執筆者:上村 由紀子

演劇ガイド

「お前らみたいに大学や養成所でタラタラやってきた奴らより、ジャニーズ事務所のアイドルの方が死ぬ気で向かってくるしハングリー精神も凄いんだよ! あいつらがどれだけ大変な思いで舞台に立ってるかお前らには分からないだろ!」

全てのメンバーは最後列からスタート

ジャニーズ事務所で行われるデビュー前のレッスンでは誰もが最初、一番後ろの列からスタートします。講師の顔も良く見えない最後列から始めて、認められたメンバーだけが前列に進むことを許され、更にその中からジャニー喜多川氏のお眼鏡にかなった者だけがデビューできるという厳しいシステム。

レッスン開始からデビューまでの期間は人によってまちまちで、現在Kis-My-Ft2のメンバーとして活躍中の藤ヶ谷太輔さんのレッスン期間は何と約12年! 一見華やかで明るく見える彼らの姿の裏には、厳しい”下積み”の期間がきっちりあるのです。蜷川さんは必死に稽古に食らいついてくる彼らの姿を見て、レッスンスタジオでメンバー達が流した汗と涙の事を早い時期から見抜いていたのでしょう。表舞台に出る前にきっちり下積み時代を経験する……ジャニーズ事務所と舞台の相性の良さの要因は、こんなところにもあるのかもしれません。
  さて、現在のジャニーズ事務所は蜷川幸雄氏をはじめ、これまで関係を築いてきた様々な演出家や劇作家が創るストプレ(台詞劇)に随時メンバー達を出演させている訳ですが、その内容も正統派の作品からかなり過激な舞台まで多種多様。中でもガイドが特に注目する4人のメンバーをPick Upしてみたいと思います。いわば「ジャニーズ演劇四天王」!
 

正統派&芸術的舞台で輝く
東山紀之 岡本健一

まずは超ベテラン勢からこのお2人。少年隊のメンバーとして一時代を築いた東山紀之さんと、男闘呼組(現在は解散)のリズムギター&ボーカルとして活動した岡本健一さん。

近年では蜷川幸雄・演出作品『サド侯爵夫人』 『わが友ヒットラー』、博士役とクリーチャー役の二役を交互に演じた『フランケンシュタイン』、映画も大ヒットした『英国王のスピーチ』、再演『ジャンヌ・ダルク』等、正面ド真ん中の演劇で魅せる東山紀之さんは安定の実力派。そのストイックな姿勢で演劇界でも事務所の大看板をしっかり守っています。

隅田川左岸の実験的小劇場・ベニサンピットを拠点に、数々の伝説的舞台を生み出したTPTの『蜘蛛女のキス』に22歳で出演し、その後も多くのTPT作品に参加しつつ、松尾スズキ 作・演出の『キレイ』出演や新国立劇場『リチャード三世』タイトルロール等の難役を演じ、更には英国の劇作家 ハロルド・ピンター作品の演出までこなす岡本健一さん。出演舞台の多さ、そのジャンルの幅広さからジャニーズ事務所きっての舞台人と言っても良いと思います。繊細な青年役からどこかすっとぼけた三枚目まで自然に演じ切る力量は流石!

 

個性を武器に様々なキャラクターを演じる
森田剛 八乙女光

次は中堅&若手からのお2人……V6の森田剛さんとHey! Say! JUMPの八乙女光さん。

今、演劇界で最も評価されている俳優の一人といっても過言ではない存在になった森田剛さん。舞台の出演本数は2014年10月現在で7本と決して多い方ではないのですが、人を斬る事でしか他者と関係を築けない男・岡田以蔵を演じた『IZO』、1960年代のテロリスト役『血は立ったまま眠っている』、35歳の彼がアスペルガー症候群の15歳の少年を演じた『夜中に犬に起こった奇妙な事件』等、一筋縄ではいかない役柄に次々とトライし、2013年の「えんぶチャート」俳優部門では並居る舞台俳優達を押さえ、見事1位に輝いています。

劇団☆新感線の『鉈切り丸』では身体中から発せられる何とも言えない「哀しみ」と、喉の奥から絞り出される声に心を揺さぶられ、舞台上で生きるとはこういう事なんだ……とカーテンコールで拍手をしていると、瞬時に役者の顔からV6の森田剛に戻って舞台上で観客にアイドルシフトの笑顔を見せる森田さん。次回作は映画監督・行定勲氏が演出する『ブエノスアイレス午前零時』ですが、今後も唯一無二のプレイヤーとして様々な舞台に出演していく事でしょう。

2003年に『Stand by Me』で舞台デビューし、その後は主に滝沢秀明さんの座長作品に出演してきたHey! Say! JUMPの八乙女光さん。今年の春にシアターコクーンで幕を開けた『殺風景』では主役の稔役で出演していましたが、これが中途半端な金髪で、さしたる理由もなく幼馴染を殺害し、その事にほぼ罪悪感も覚えないというとんでもない役。

地方に暮らす若者の何とも言えない鬱憤と日常の中に潜む狂気を西岡徳馬さん、キムラ緑子さんらのベテラン勢に混ざって見事に表現していた八乙女さんの舞台度胸と演技力も素晴らしかったですが、何より驚いたのは昼間のバラエティ番組で売出し中の若手にこういう役をやらせてしまうジャニーズ事務所の懐の深さ。これは一過性のアイドルとして所属メンバーの事を見ていないという事務所の姿勢と、これまで築いた演劇人との信頼関係あっての事だな、と感じました。(『殺風景』作・演出の赤堀雅秋氏は『演技者。』『劇団演技者。』にも参加)。そしてそれら全てを信じて冒険ともいえる稔役を演じ切った八乙女さんの今後に期待したいと思います。

ジャニーズファンから演劇クラスタへ

今回はジャニーズ事務所のメンバー達が出演する”演劇”についてご紹介しました。実はこの現象、演劇界の観客育成にも貢献しています。というのも、最初はお目当てのメンバーが出演しているという事で劇場に足を運んでいたジャニーズファンの観客達が、舞台を観る内に共演者やクリエイター達の他作品にも興味を持ち、違う舞台にも足を運んでいつしかコアな演劇ファンになる流れが少なからずあるからです。

もし、ジャニーズのメンバーが出演する舞台=アイドルが片手間にやっているファン向け演劇、という認識の方が居たら、それは大きな見当違い。是非1度劇場で彼らが輝く姿を体感して下さい。あのガチな舞台姿を見たら、そんな認識は一瞬で吹っ飛んでしまう事間違いなしですよ。

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