行政書士試験/行政書士のキャリア・開業

資格取得後の独立体験記 第32回 企業の依頼と問題点(2ページ目)

今回は、開業してこれまで経験したことを踏まえて、行政書士と企業の関係について取り上げます。企業から依頼をうける際の問題点などを、会社規模で分類してご説明します。

山本 直哉

執筆者:山本 直哉

行政書士ガイド


個人企業からの依頼のデメリット

中小企業の経営者と比べると、会社内に他人の眼がないせいでしょうか、個人企業の経営者の中には法令を遵守の意識が低い人がいらっしゃいます。

一番困るのは、法令違反だとわかっていながら、それを秘して依頼する人です(行政書士を利用する意図や責任を押し付けようとする意図が見え隠れします)。受任後に法令違反が発覚した場合、依頼をお断りしなければなりません。このような場合でも、法律上、報酬は発生しますが、支払ってもらうのに一苦労です。

次に困るのが、個人企業の依頼者に法令遵守を説くことです。その難しさを例え るならば、勉強のやる気のない子に勉強をさせようとする家庭教師のようなものです。多くの経営者は、法令遵守による経済的利益の獲得がない限り、興味を持ってくれません。

しかし、法令を遵守してもらわないと、許認可申請はできません。また、仮に、法令に違反して許可を得てしまうと(意外にできてしまうのです)後で大きな問題に発展します。

そこで、事例をあげながら法令遵守を解くのですが、その分余計に時間がかり、報酬の単価が下がります。そして、法令遵守を説くと、お説教のようになってしまい、依頼者との関係がぎくしゃくします。

中小企業からの依頼のメリットとデメリット

まずメリットは、個人企業と比べると、あまり人的つながりを重視しないので(少なくとも従業員は)、中小企業の方が依頼獲得のチャンスが眠っていることだと思います(他の行政書士と個人的な信頼関係を構築している個人企業の切り崩しは相当大変です)。実例をあげると、人事異動などによって、担当者がかわり、仕事が舞い込むことがあります。

ただ、個人的な信頼関係がはじめからあるわけではないので、依頼するかどうかは純粋な競争原理で決定されます。これがデメリットです(過当競争も多いので)。行政書士業務は、仕事内容について他者と差を設けることが難しい業種なので、結局、価格設定や実績などにより勝敗が決します。その結果、同じ仕事をしても、中小企業の報酬の方が、個人企業の報酬よりも安くなることがあります。

最後に 行政書士にとって理想の企業とその関係は

行政書士は中小企業、個人企業と共に歩んでいく士業です。ただし、上記のようにどちらの依頼もメリット・デメリットがあります。

そこで、双方のメリットを掛け合わせてみましょう。すると、仕事のしやすさの観点からは法令遵守をする中小企業が選ばれ、依頼獲得の観点からは信頼関係を構築することが必要とされます。つまり、従業員数が多くない中小企業で、経営者と従業員の全員と個人企業のような信頼関係を築くことが、行政書士にとって理想の企業とその関係になります。

これにより、法令を遵守する企業から、信頼関係に基づいた安定的な依頼が獲得できるのです。なお、実体験から申し上げると、信頼関係があれば、依頼の理由が価格よりも安心感に変わるので、価格競争をある程度しないで済みます。
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