美術館で見る「絵」
先日西武さんは、地元の文化会館での展覧会で、作品をこんなふうに展示していました。「木枠にはめ込んだパネルに、絵具をつかって、いろいろな形態の絵を描きました」(西武さん)。
展覧会で見る絵、というと、額縁やこのようなフレームに納まっています。絵にとって額縁やフレームはスーツのような存在でもあり、衝撃を防ぐための装置でもあります。
「キュレーターや学芸員が考える企画について、僕は打ち合わせや質問を交わして、制作に取り掛かります。この作品の展示場所は戦前から残る古い洋館で、建築やデザインにこだわりが見られます。僕の作品は四角い額縁に入れるより、八角形のフレームに入れてみようと思ったのです」(西武さん)。
壁に描かれた「絵」
西武さんは壁に「絵」を描くことがあります。「これはギャラリーで発表したものです。表現しようとするもの、美術用語で『モチーフ』と呼びますが、この作品では水中の生き物や風景です。僕なりの解釈で形を崩したり、色を統一させて、壁一面に描いています」(西武さん)。
普通の人にとっては踏み入れることに勇気が必要なギャラリーですが、アーティストにとっては実験ができる大切な場。西武さんはこのギャラリーの壁を小さな自然界、自分の世界に見立てています。私たち鑑賞者は、そんな西武さんの世界観を共有しながら、これは何を表現しようとしているのかな、と想像力をかき立てていきます。
「難しいことを考えるより、鑑賞者自身の想像や解釈を楽しんで、作品を見て欲しいですね」(西武さん)。
こうしたアーティストが壁に描いた絵、つまり壁画(へきが)は、近年デパートなどの商業施設でも取り入られるようになっています。