3.: 共存するファンタジーとリアリティー、そして最後にミステリー
『昼顔』にリアリティーを感じる人もいれば、ファンタジーを感じる人もいます。
暑い季節、坂道を自転車で上がっても汗をかかず、汗をかいても化粧は崩れず、そこでイケメンに出合う奇跡に ドキドキした人もいれば、ナイナイ…と呟く人もいる。ファンタジーとリアリティーの共存、それが『昼顔』です。
冷静に考える視聴者もいます。
家族が破たんし、何もかもが壊れ始める後半、「かわいそう……」と感じる人もいれば、 「こちらも弁護士を立てればいいのに」 、「まずはカウンセリングでしょ」など 、社会のシステムを効率よく利用できない登場人物をもどかしく感じている人もいます。
そして最後にミステリーが加わります。
サイレンを鳴らす意味深な消防車の謎、「神様をまた怒らせるかもしれません」の沙和の台詞、解せないモヤモヤが、謎解きへの新たな興味を生み、盛り上がりの持続を仕掛けているとしたら、心憎い演出です。
4: 多岐化する視聴者
当初、不倫の夢物語が気になり「昼顔」ワールドへ参入し、胸をときめかせていた人も少なくないでしょう。しかし、秘め事の平穏な時間は長くないもの。修羅場も泥沼も足早にやってきます。泥沼以降、視聴者の思いはグイグイ枝分かれしていきます。これが不倫ドラマの醍醐味とニヤニヤする人、「切ない……」と感情移入し涙する人、そもそも大人の恋愛ではないと行く末を案じる人。不倫を応援する人と冷静にどうなるかを見極めようとする人と……。
そして視聴者同士が、ネットで職場で学校で 見方考え方を往来させ語り合う。昼顔論の活性化がドラマをさらに盛り上げたと言えるでしょう。