伝統的なビッグネイキッド XJR1300
かつて国内4台メーカーと言われるホンダ・ヤマハ・スズキ・カワサキは4気筒エンジン、1000ccオーバーのネイキッドバイクをそれぞれラインナップしていました。
- ホンダ CB1300
- ヤマハ XJR1300
- スズキ GSX1400
- カワサキ ゼファー1100
それぞれが最先端の技術がつぎ込まれたフラッグシップ車両でした。
1990年代のモア・パワー、モア・トルク。とにかくもっとパワーを、とにかくもっと速い車両をという時代は終わり、乗りやすいバイクを求めるユーザーが増えていきました。
国からも環境性能の高い車両を作るように規制がかかり、4気筒エンジンを搭載し1000ccを超える排気量のネイキッドバイクは今ではヤマハのXJR1300とホンダのCB1300のみです。
XJR1300の歴史は古く、1994年にXJR1200が販売開始され、フルモデルチェンジ版として1998年に誕生しました。その歴史はXJR1200の頃から考えると20年以上になります。
ホンダのCB1300が水冷エンジンなのに対して、ヤマハのXJR1300は空冷エンジン。空冷エンジンは放熱の為にエンジンにフィンがついているのが特徴ですが、このデザインが好きというユーザーも多く存在します。
今回も暑さが厳しい都内の通勤でXJR1300を一週間きっちり使いインプレッションをお届けします。
ストップ&ゴーの多い都内でも、XJR1300のエンジンの熱はさほど感じなかった
読んで字のごとく、水で冷やす空冷エンジンと、風で冷やす空冷エンジン。理論的には水冷エンジンの方が冷却性能に優れ、エンジンのノイズも低減することができるといわれており最近では圧倒的に空冷エンジンよりも水冷エンジンを採用する車両が増えています。
今回は9月の残暑厳しい中での試乗となりました。気温が30度前後まで上がる日もある中、どこまで都内の通勤に耐えられるかな?と思っていたのですが、思いのほか快適。
家の近くの踏み切りで5分以上停車し、更にその先の信号でも見事に赤信号。そんな状況でも「少し熱が来てるかな?」という程度で、1000ccクラスのSS【スーパースポーツ】の発熱量に比べたら雲泥の差でした。
しかし自宅に到着し降りてみたところ、エンジンはかなり高温。これだけ高温になっているのに、乗車中にライダーに熱が伝わってこないのはなぜなのか。エンジンをよく見てみると、「遮熱板」が取り付けられていました。
この遮熱板のおかげで足や太股に熱風が当たりにくくなっており、ストップ&ゴーの多い夏場の都内でも快適に走行することができたのです。
XJR1300の幅広シートは若干足つき性を悪化させるが、ロングツーリング時などの疲労を軽減するのに効果的
XJR1300のシート高は795mmと低めですが、幅が広いので実際にまたがってみると数字以上に足つきが悪く感じました。ただ、身長165cmの筆者でも街中で困ることはなく、幅広のシートは長時間運転する際にはお尻が痛くなりにくいので、メリットの方が大きいといえます。
XJR1300のアクセルは安全を考慮したためか、若干重め
走り出してみると想像以上にアクセルが重く感じます。慣れるまではアクセルの開け方に戸惑うかもしれません。排気量が1300ccもあるバイクなので、誤ったアクセルの開け方をしてしまうとバランスを崩す可能性があります。メーカーがあえてアクセルを重くしているのかもしれません。
重いアクセルを少し開けながら走行していると、実に滑らかで扱いやすいエンジン。ギアを一度トップギアの5速まで上げてしまえば、細かいギアチェンジは不要です。
ある程度は減速してもギアを下げることなく再加速することができるので、街中の運転も非常に楽でした。また、少しアクセルを多めに開けると体を後ろに引っ張られるような強烈な加速をします。
街中ではちょっとアクセルを開けながらギアチェンジしていけば、あっという間に5速で法定速度に達してしまいます。そのためあまり多めにアクセルを開ける機会はありませんでしたが、試しに開けてみると圧倒的な加速に思わず「おぉ」っと少し声が出てしまいました。
XJR1300のリアサスペンションは社外のサスペンションでも有名なオーリンズが装着されています。オーリンズの私の印象は公道を快適に走る為には若干バネレート(サスペンションのバネの硬さ)が硬すぎる印象があったのですが、さすがに市販車用のセッティングになっているので快適な乗り心地でした。
しかも、オーリンズのサスペンションの中でも比較的高性能で高額な部類に入る、伸び側・縮み側の両方の減衰力を調整できるタイプが採用されているため、好みのセッティングをライダーが選択することが可能です。
今回の試乗では初期セッティングでも充分に快適だったので、特に調整する必要は感じませんでした。
乗る度に体になじんでいく感覚がある
バイクを運転する醍醐味の一つに、コーナーをいかにうまく曲がれるか?ということをあげる人は多いと思います。ステアリングを切れば思ったとおりに曲がる車と違い、バイクの場合はコーナリングの際に減速や体重移動などを駆使することで、車体を倒してきれいに曲がることが出来ます。
バイクもどんどん進化していて、流行のストリートファイター系車両やSS車両を運転してみると、まるで自分が急にうまくなったかのように錯覚してしまうぐらい、コーナーで車体を制御するのが楽になっています。
それに対して、XJR1300はコーナーで違和感なく曲がることが出来ますが、最近のバイクと比べると車体は重く、コーナリング時もライディングテクニックの基本がしっかりと必要になります。
ライディングテクニックと大げさに言ってみましたが結局は慣れです。乗る度にビッグネイキッドを操る楽しみに触れ、体になじんでいくような感覚があります。XJR1300は入り口は広く、懐がとても深い車両です。
普通に乗れば、違和感無く乗れてしまう車両ですが、毎日の通勤で使っていると、どんどんその魅力に引き込まれ操る楽しさを感じさせてくれます。
今でも山道などに行くと、XJR1300を良く見かけるのは連続したコーナーなどを走ることで操る楽しさを体感できる車両であるからといえます。
ネイキッドと言えば、マルチに使える車両の代名詞。車体は重く出し入れが大変な感はありますが、長年連れ添いあなたのよき相棒になり得るマシンであると言えます。
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