沖縄本島の北部「やんばる」ってどんなところ?
亜熱帯の森をマングローブの川が流れるやんばるの風景 (c)OCVB
全国的に高まる癒しスポットや山の人気にともなって、沖縄でもここ近年、やんばるエリアに注目が集まるようになってきました。沖縄本島の北部のことをやんばると呼ぶことは広く知られていると思いますが、実際やんばるまで足を伸ばす旅行者の数はそう多くなく、足を伸ばしたとしても日帰りで最北の辺戸岬の周辺をぐるりと一周しただけ、という人がほとんど。
一般的にやんばると呼ばれるのは、大宜味村、国頭村、東村ですが、恩納村や金武町を含めて呼ぶ場合もあります。それを地図で見てみると想像していた以上に広く、沖縄本島の1/3を占めているともいえるその大きさに驚くはず。こうして見てみると、日帰りドライブでは単にやんばるを素通りしただけ、と言われることにも納得。1泊したとしても、移動に費やされる時間がほとんどで、何も見ずに帰ることになってしまうわけです。
やんばるの魅力を知る人はみな口を揃えて、「やんばるに遊びに来るなら連泊でゆっくりと滞在して欲しい」と言うのですが、そんなに何泊もしても飽きないのかな? やることはあるのかな? と疑問に思う人が多いと思います。今回は、そんなみなさんの「やんばるってどんなところ?」の思いに応えるべく、やんばるの楽しみ方や遊び方をご紹介したいと思います。
やんばるの森について
生命力に満ち溢れるやんばるの森
やんばるには、沖縄最高峰の与那覇岳をはじめとした山々が連なります。他のエリアに比べると、ぐんと標高が高く変化に富んだ地形が特徴で、目にする風景はいわゆるポストカードにある沖縄のイメージとは異なるもの。
亜熱帯のジャングルに覆われた森には年間を通して霧が多く発生し、霧に包まれた山の風景は、トロピカルな南国リゾートのある沖縄ではなく、自然の神々が宿る“もののけ姫”の世界に通じるもの。そこにあるのは、“太古の森”と呼ばれる生命の宝庫の森なのです。
やんばるの固有種であるノグチゲラ
そんなやんばるの森では、ヤンバルクイナやノグチゲラ、セマルハコガメなどの天然記念物指定を受ける稀少動物をはじめ、昆虫や植物など、多種多様の希少種が生息し独特の生態系を育んでいるのです。
ブロッコリーの森といわれるイタジイの木々の覆われたやんばるの山
遠くから見るとモコモコとまるでブロッコリーのように見える木はブナ科の常緑広葉樹イタジイ。森の中には、太古の昔からの生き残りといわれるシダ科の巨大植物ヒカゲヘゴが群生し、ジャックと豆の木のような強靭な蔓が絡まる様子は、まさにジャングル! 岩肌からはひんやりとした湧き水が溢れ、コウモリ傘ほどの大きさに成長したクワズイモの葉や大輪のゲットウの花に、普段、本州で見るのとは異なる南国ならではの植物の力強さを痛感するはず。霧が晴れて太陽の光が差し込んだ時の森の美しさは格別で、一気に躍動感を増した森はキラキラと眩しいほどに生命力を漲らせます。
やんばるのみに咲く固有種のノボタン。上品な美しさで森を彩ります
360度をジャングルに囲まれた森の中では、不思議と五感も鋭敏になるのか、マイナスイオンに包まれた土の匂いや、緑の匂い、芳香を漂わせる南国の花々などにも心躍ります。涼しげな清流の水音や風に揺れる木々の葉音、遠くで響くバサバサと大きな羽を広げて飛び立つ鳥の羽音など、森のあちこちから聞こえてくる音もまた、この森の生命の豊さを教えてくれるもの。
やんばるの森で、人は五感で自然のエネルギーを感じることを自然と思い出すようです。
では、次ページでは山での自然の楽しみ方を紹介します。