10月の大統領選挙を先取りした動き
1ヵ月という短期の騰落率は、ほぼ毎月騰落率ランキングの顔ぶれが一新されているようです。2014年8月の騰落率ランキングは、ブラジル株ファンドの躍進が非常に目立っています。ETFを含むと、騰落率ベスト10の内7本がブラジル株を投資対象としているファンドです。
短期の騰落率ランキングは顔ぶれが一新
ブラジル株ファンド躍進の背景は、10月に迫った大統領選挙による大統領交代期待によるものです。2014年はインド、インドネシアで選挙により大統領が交代。大統領交代で景気が回復するとの期待から株価が上昇。ブラジルもその流れに乗ったようです。
当初、現職のルセフ大統領の再選と言われていましたが、マリナ・シルバ氏（元環境相）が猛追していることから、変化を先取りした投資資金が流入していたようです。
ただ、騰落率第1位になったのはブラジル株ファンドではなく、三井住友アセットマネジメントの「ベトナム株式ファンド」でした。騰落率は唯一、ふた桁の12.11％です。目立たなかったものの、ベトナム市場が堅調に推移したことが好成績の要因です。ベトナムの株式市場が小さいため、同ファンドの組入銘柄数は18。集中投資を行わざるを得ないことから、運用成績の乱高下には要注意です。
第2位は大和証券投資信託委託の「ジャパン・エクセレント」という日本株ファンドです。8月下旬の円安進行により、組入上位業種の電気機器や機械などが買われたことが背景にあると考えられます。このファンドは2014年2月20日に設定されたルーキーファンドです。
第3位から第9位までをブラジル株ファンドが占めていますが、9位のＵＢＳグローバル・アセット・マネジメントの「ＵＢＳブラジル・インデックス・ファンド」の騰落率が6.99％。3位の日興アセットマネジメントの「ブラジル株式ファンド」の騰落率が8.01％とその差は1.02％に過ぎません。アクティブ運用の運用力というよりも、市場全体の上昇による好成績と言えそうです。
1年の騰落率はインド株ファンドが席捲
運用期間を1年まで伸ばしてみると、騰落率ランキングの顔ぶれは全く違ったものになります。図版は第10位までの掲載となっていますが、第1位のシンプレクス・アセット・マネジメントの「マザーズ・コア上場投信」騰落率146.13％を除けば、第15位まで全てインド株ファンドとなっています。
1年騰落率ランキング。はほぼインド株ファンドが占める
インド株式躍進の理由は、2014年8月下旬から9月初旬にかけて来日したインドのナレンドラ・モディ氏が新首相に就任したことです。「モディノミクス」と呼ばれる経済政策の下で、インフラ整備などが加速することを期待して株価が上昇したことが要因です。
第1位のマザーズ・コア上場投信の運用成績は素晴らしいの一言ですが、2014年8月末現在でミクシィの組入比率45.01％、インフォマート22.69％と2銘柄で約3分の2を占めています。2銘柄の高騰なしにはありえなかった騰落率と言えるでしょう。
第2位は騰落率118.67％のHSBC投信の「HSBCインド・インフラ株式オープン」です。インフラ関連株が上位に来ているのは、モディノミクス期待を株式市場が先取りしたことによるものと予測されます。
1ヵ月、1年の騰落率ランキングを見てきましたが、わずかながら日本株が検討していると言えそうですが、大勢は新興国。しかもBRICs諸国が久しぶりに大躍進です。中国株も総じて堅調であることから、新興国株ファンドの躍進はしばらく続くのかもしれません。
