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9月の注目レース~「三冠」最終ラウンドへ向けて~

9月は、その後に待ち構えるG1レースに向けて、有力馬が始動する時期。なかでも、同世代の戦いである「三冠レース」の最終戦を目指す3歳馬に注目が集まります。今回は「神戸新聞杯」や「ローズステークス」などの3歳限定戦を紹介します。(※レースの情報は、すべて2014年8月末時点のものです)

河合 力

執筆者:河合 力

競馬ガイド

見据えるのは「菊」の舞台か
3歳牡馬のトップクラスが続々と始動

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2013年のセントライト記念を制し、菊花賞へ向かったユールシンギング(写真 JRA)

夏以降にデビューしたばかりの2歳馬。その一つ上で、春から同世代の「三冠レース」を戦ってきた3歳馬。そして、「古馬」と呼ばれるベテランの4歳以上。競走馬はおもにこの三つのカテゴリに分けられています。

10月~12月末にかけては、各カテゴリにおけるG1レースが目白押し。9月はそのG1シリーズに向け、夏休みを終えた有力馬が復帰する時期と言えるでしょう。なかでも注目なのが、3歳馬たちの動向。3歳世代にとって、秋の始動戦は特に重要なポイントになるのです。

3歳の精鋭たちが、春からしのぎを削って来た「三冠レース」。「三歳クラシック」ともいわれる同世代の戦いについて、もう一度スケジュールを振り返ってみましょう。

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4月:G1皐月賞(芝2000m/中山競馬場)
5月末~6月:G1日本ダービー(芝2400m/東京競馬場)
10月:G1菊花賞(芝3000m/京都競馬場)
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三冠に位置付けられた三つのG1レースは、上のようなスケジュールになっています。日本ダービーで戦った3歳馬たちは、夏休みを経て9月に復帰。そして、三冠最終戦の菊花賞に向かうのが一般的です。

9月に復帰する3歳馬たちが、その復帰戦として選ぶのはおもに以下の2レース。この二つは「菊花賞トライアル」となっており、いずれも上位3着までに入れば、菊花賞の優先出走権が得られます。

G2セントライト記念(芝2200m/中山競馬場)※2014年は、新潟競馬場で実施
G2神戸新聞杯(芝2400m/阪神競馬場)


菊花賞の出走馬は、賞金獲得順とトライアルでの優先出走権を元に決められます。ですから賞金を稼げていない馬は、このトライアルで3着以内に入り、“ファイナルラウンド”の出走権を獲得したいところです。

一方、春に活躍し、賞金は十分足りている世代トップクラスの馬にとっても、このトライアルは大きな意味を持ちます。その意味とは、菊花賞で待ち構える「3000m」という特殊な距離への準備です。

未知の距離へ向けて、9月のレースが「テスト走行」

レース中に障害を越えていく「障害レース」を除き、3000mを越える“超長距離”のレースは、JRAで年に6レースしかありません。G1に限れば、菊花賞と4~5月に行なわれる天皇賞・春(芝3200m/京都競馬場)の二つのみ。3歳秋のサラブレッドにとって、菊花賞は初めての3000mレースとなります。

皐月賞や日本ダービーに比べ、距離が延びる菊花賞。スタミナが問われるのはもちろん、それ以上に重要となるのが、各馬の我慢強さです。

菊花賞に挑む3歳馬は、先述の通り、こんな長い距離は初めて。どこまで体力が持つかは、やってみなければ分かりません。となれば当然、前半はとにかくゆっくり走ってスタミナ切れを回避しようとするもの。そこで生まれる、かなりのスローペース。

今までのレースよりもずっと遅いペースに対して、走りたがりの馬たちは「こんな遅いペースじゃ走れない!」とリキんだり、ストレスをためたりしてしまいます。これを「折り合いを欠く」といいますが、菊花賞では、いかにスローペースに我慢できるかが勝負となるのです。

そこで、前述の菊花賞トライアル。ここである程度ゆっくり我慢を利かせて走れなければ、3000mの決戦にはいけません。つまり、セントライト記念や神戸新聞杯であえてゆっくりレースを運び、「折り合い」の確認を行なう馬が出てくるのです。

もしトライアルで折り合いに不安を見せるようだと、その馬は同世代の菊花賞ではなく、4歳以上の古馬と戦うG1天皇賞・秋(芝2000m/東京競馬場)に向かうことも。実際、トライアルのレースぶりを見てから、どちらのG1に向かうかを決める3歳馬もたくさんいます。

折り合いの不安をトライアルで一掃したエピファネイア

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最後の一冠へ、精神面の進化を見せたエピファネイア(写真 JRA)

2013年の皐月賞と日本ダービーで、ともに2着と涙をのんだエピファネイア。同馬はとにかく闘争心が強く、レース序盤から気合十分なため、ペースのコントロールが難しいタイプ。日本ダービーでは、勢い余って前の馬の脚に引っ掛かってしまうほど、“気持ちが入り過ぎる”タイプだったのです。

最後の菊花賞でタイトルを取りたい。でもこの闘争心は、3000mのスローペースで確実にマイナス。暴走してしまうかもしれない。そんな課題を持って挑んだ神戸新聞杯で、エピファネイアは今までにない「折り合い」を見せます。

2013神戸新聞杯のレース映像(エピファネイアは黄帽の10番)

ゴールの瞬間、コンビの福永祐一騎手が見せた笑顔。「やっとこの馬を乗りこなすことができた」とコメントしたように、高過ぎる闘争心をうまく直線まで温存した理想のレースでした。これならペースが遅くなる菊花賞でも折り合って進めることが出来ます。

陣営はこのレースぶりを見て、菊花賞への挑戦を表明。そして見事に、最後の一冠を獲得します。

2013菊花賞のレース映像(エピファネイアは黒帽の3番)

3000mの特殊なG1レースを前に、どんなテスト走行を見せるか。それが菊花賞トライアルの見どころでもあるのです。

牡馬と同様に、牝馬も重要なトライアルレースを迎えます。次ページで紹介します。

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