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ヒヤリハット 危険が少ない住まいについて考える(2ページ目)

これから新しく住宅を建築したり取得するなら、できるだけ安心安全な住まいとしたいというのは、誰しも願うことだと思います。そこで今回の記事では、「ヒヤリハット」という言葉をキーワードに、安心安全な住まいのあり方について考えていきます。

田中 直輝

執筆者:田中 直輝

ハウスメーカー選びガイド

住宅内のどこでどんなシチュエーションで事故が発生しているのか、から考えていきましょう。(独)国民生活センターによると、2010年12月から2012年12月までの2年間で、65歳以上の高齢者が事故に遭遇した場所として、住宅内が77.1%を占めていたそうです。

まず確認したい階段の安全性

そして、その原因として最多が「転落」となり、約3割以上を占めていたそうです。発生した場所としては「階段」が17.1%と最も多くなっていることから、住宅内で最も危険な場所といえそうです。このほか「脚立」「ベッド」などが続いていました。

階段

階段での転倒防止は、住まいの重要課題の一つ。写真の階段は踊り場があり、階段の傾斜も緩やか。手すりもあって理想的な造りだ(クリックすると拡大します)

私は常々、分譲住宅などの住宅を見学する際、「かならず階段がどうなっているかしっかりと確認して下さい」と申し上げてきました。具体的には、階段の傾斜や踏み板の大きさ、手すりの設置などです。その視点が重要なだというのは、このような調査実態からも裏付けられると思います。

ですから、皆さんには将来、高齢化により身体機能が衰えても階段の上り下りが安心安全か、という視点でチェックして頂きたいですし、それは注文住宅を建てる上でも注意して頂きたいことになります。このほか、「転倒」が22.1%、「さわる・接触する」が14.5%となっていました。

転倒を防止するためには、まず段差のないバリアフリーとすることが重要となりますが、さらには手すりを付けたり、仮に転んでもケガをしにくいフロア材を採用するなどの工夫も考えられます。また、意外にあると便利なのが玄関の腰掛け。これは高齢者にとってクツの着脱はもちろん、立ち上がるのも容易になります。健常者、特に女性にとってはブーツの着脱の際にも便利です。

このほか、高齢者関連では「浴室」も危険な場所の一つ。床で滑って転倒することが最も危険ですから、その対策はしっかりとしましょう。また、居室と脱衣所、浴室の温度差によるヒートショックも事故の一因となることがありますから、その対策も大切。つまりそれらの空間の温度差を少なくする、温度のバリアフリー化を行うということです。

一方、子どもの事故で起きやすいのは、「転落」で29.5%、次いで「転倒」18.3%、「ぶつかる・当たる」15.6%と続いています。ただ、子どもの場合は年齢が高まるにつれ、行動範囲が広がりますから、その発生の割合は年齢により変わってくるようです。

ちょっとした工夫と配慮の違いが長期間の安心安全を左右する

例えば、転倒では0歳~2歳以下で大人用のソファやベッドから落ちるケースなどが数多く報告されているそうですが、これは年齢が高まるにつれ報告が少なくなります。ですので、子どもに場合はその行動の特徴を理解して対策をするのが大切といえます。

コンセント

コンセントの位置は、施主の要望で自由に取り付け位置を変えられる。幼児がいる世帯では手の届かない少し高めの場所に設置すれば、不慮の事故を防止することができるかもしれない。

例えば、前ページで紹介した私の「ベランダから飛び降りそうになる」という事例は、サッシのカギを子どもでは操作しにくい形状にすることで解決できる場合がありますし、ベランダのフェンスの形状を工夫することで上りにくくすることもできます。

また「コンセントに異物を入れる」ということについては、異物を入れにくくする形状のコンセントなどもあります。また、一般的にコンセントの位置はどの住宅でも同じ高さにあるように思われますが、実はこれは高さを変えられるのです。

つまり、コンセントの高さというのには決まりがあるわけではなく、施主の任意の高さに配置できるのです。子どもが少なくとも5歳くらいまではコンセントをいじれない高さに配置することで、感電などの事故を未然に防ぐことが可能になるというわけです。

このような住まい手の安全・安心に関する工夫については、ハウスメーカーでは様々な研究・開発を行っており、私は実はそのあたりが住宅の善し悪しの大きな違いだと感じています。要するに、建材メーカーだけのアイデアに頼らず、自らそうした研究や開発を行っているか否か、に違いが表れるのです。

それらは、一見地味でちょっとした工夫のように思われますが、そこが住まいの長期的な満足度の違いに表れてくると思われます。キッズデザインやユニバーサルデザインといったより高度な提案をしているハウスメーカーもありますので、是非、住まいづくり・住宅購入の重要な検討ポイントにしていただきたいと思います。
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