小林劇団が故郷
真佐美:そうですね。小さい頃からずっと役者をしてるし、どこかに定住したことはないですね。
ガイド:学校生活はどうでしたか?
真佐美:小学校は普通に通ったほうだと思うんですけど、中学校になったら役者の仕事が面白くなってきたのであんまり通わなくなってしまいましたね。
ガイド:じゃあ幼馴染とか学校時代の友達っていうのはあんまり残っていない感じですかね?
真佐美:いないですね~。
ガイド:お兄さんの小林真座長だと広島に地元意識があるみたいですけど、真佐美さんの場合はどうでしょうか?
真佐美:私の場合はそれもないです。あえて言えば、小林劇団が故郷みたいな(笑)
フツーの子役から”女優”小林真佐美へ
ガイド:小学校とか子役の頃はどんな意識でお芝居に取り組んでいましたか?真佐美:小さいときは芝居が大嫌いだったんです。「これから出番!」っていうときも逃げ回ってました(笑)
ガイド:今の真佐美さんは「小林真佐美!」って感じのギラギラした芸風を確立してますけど、小さい頃はどんな子役だったんでしょうか?
真佐美:今みたいな感じとはぜんぜん違ったと思います。どう言っていいのかわからないけど、フツーの子役をしてたと思います。でもずっと歌は好きだったので、2歳くらいからお母さんと一緒に長山洋子さんの『捨てられて』を歌ったりしてましたよ。
ガイド:真佐美さんが歌を歌えるのはお母さん、小林真弓さんのDNAですね。中学校くらいから仕事が面白くなってきたということですが、なにかきっかけはあったんですか?
母、小林真弓
ガイド:打算的ですね(笑)周囲の反応はありましたか?
真佐美:これから頑張りたいっていうことをお母さんに話したら、改めて化粧道具を揃えてくれて、少しずつ台詞の多い役を回してくれるようになりました。それから自分でも意識を変えて取り組んでいったんですけど、大嫌いだった芝居が今では大好きになっています。
小林四兄妹
ガイド:真佐美さんには今30歳の真さんをはじめ3人のお兄さんがいるわけですが、それぞれどんな関係でしたか?
ガイド:年はいくつ離れていたんですか?
真佐美:2歳です。ガイド:じゃあお兄さんの中では一番身近な存在だったんですね。
真佐美:いつも一緒に遊んでました。どこに行くにも「真佐美!行くぞ!」って言って。兄妹の中で私だけ女じゃないですか。公園とか遊びに行って変な人が喋りかけてくると「真佐美!こっち来い!」って逃がしてくれたり……本当にいつも私のことを心配してくれる優しい兄でしたね。ガイド:お芝居の面でも一番意識するのはやっぱり正利さんでしたか?
真佐美:舞踊の練習をするのは二人一緒のことが多かったですね。どんな内容にするか相談したり。
ガイド:亡くなってしまったことで真佐美さんに変化はありましたか?
真佐美:意識ががらりと変わりました。それまでは「小林劇団=三兄弟」っていうイメージが強くて、私のことはあんまり兄妹として認識していないお客さんも多かったんですよ。正利が亡くなることで、必然的に私の立ち位置も前に押し出されることになったから……これまで4本の柱があったのが3本になっちゃったわけですから「私がもっとがんばらなければ」と。
ガイド:周りから真佐美さんに対する評価が変わったと感じることはありましたか?
真佐美:すごくありました。芝居も舞踊も、正利がやってた演目は全部私が受け継いでるから、重ねて見てくれてる人が多いんでしょうね。みんな「頑張ってるね。成長したね」と温かい声をかけてくれるんです。
“前に出る”女優・小林真佐美
ガイド:大衆演劇の世界では男の役者が中心になっていて、女優さんは脇役を超えないのかなと思っていたんです。でも初めて小林劇団を取材した時、真佐美さんのキャラの立ち方とかオーラとか「これはすごいものを観てしまったな」と感じました。
ガイド:真佐美さんは今の小林劇団の中ではどんな役割を担当していきたいですか?
真佐美:元気で明るくて笑顔で……エンターテイメント的にお客さんを楽しませる要素を自分が作れたらと思っています。
大衆演劇女優のファッションリーダー
ガイド:真佐美さんのメイクとか着こなしって大衆演劇の枠を守りつつもすごく現代的でセンスがいいですよね。同姓があこがれるファッションリーダー的な要素を感じるし、若い女性ファンが多いのもうなづけます。今のスタイルってどのように出来上がってきたのでしょうか?
ガイド:それ以前とは意識して変えていったということでしょうか?
真佐美:女役の化粧はよりやわらかい雰囲気にしていこうとは心がけましたね。昔の女役の化粧ってきつい感じのが主流だった気がするんで。
ガイド:なにかメイク本とかで研究したりしたんですか?
真佐美:小悪魔ageha(現在は休刊)とかPopteenを読んで流行はチェックしてますけど、メイク本って読んだことがないんですよ。基本、人に教わったり真似するのが嫌いなので自分の個性でいろいろ工夫して作っていきたいと思ってるんです。
小林真佐美の方向性
ガイド:小林劇団の一員としてお芝居や舞踊に関して重んじていることってありますか?真佐美:真兄ちゃんの方針もあるけど、私や直行にしても「小林劇団は芝居が売り」っていう自負があります。業界では舞踊ショーの位置づけが大きくなってきてますけど、うちはあくまで真剣な芝居を軸にしていきたいと思っています。
ガイド:最近はきらびやかな舞踊や、お芝居にしてもお笑いを交えたおちゃらけたものを売りにしている劇団が増えてますよね。
真佐美:私は逆に……ずっと泣きの芝居を重んじてきたこともあると思うんですけど、芝居の中で笑いをとるのが苦手なんですよ。
ガイド:真佐美さんにとって、演じていてしっくりくる役柄とか好きな役柄はありますか?
真佐美:そこはあんまり意識しないようにしてます。一度得意と思っちゃうと逆にプレッシャーになりそうだし。
ガイド:個人的には悪女みたいな役がすごく上手いなぁって思うんですが(笑)真さんもそういう役を意識的に振ってる気がします。
真佐美:それはいろんな人に言われます。お母さんにさえ(笑)
ガイド:逆に、今後挑戦したい役柄ってありますか?
真佐美:私は女だし身長もあまりないから向いてないのかもしれないですけど、一家の親分役にはあこがれます。20歳の誕生日に自分の希望で森の石松役を演じたことはあるんですけど。
ガイド:石松はまだ親分じゃないですもんね。個人的には今でも真佐美さんならいい親分役ができるんじゃないかなとは思うんですが……今後ぜひ観てみたいものです。
母、小林真弓との関係
ガイド:お母さんも長年、女座長として小林劇団を支えてきたとても個性的な女優さんですけど、なにか影響を受けた自覚はありますか?真佐美:「ここをこう影響受けた」とか細かいことはわからないですけど、いろいろあるのかも知れないですね。歌が好きなことだったり。
ガイド:子供の頃はお母さんとの関係はどんな感じだったんでしょう?
真佐美:お母さんには小さい頃から怒られ続けて、私も反抗しっぱなしだったんです。子供の頃は本当に不まじめだったんで「自分が間違ってるな」っていう自覚はあったんだけど素直になれなかったんですね。「あぁ、もうちょっと言うこと聞いておけば良かったかな」と思います。
ガイド:今はどうですか?
真佐美:今は本当に仲良くやれてますよ。私が芝居に真剣に向かい合うようになったので……昔だと共演するとどこかギクシャクしていたのが、今ではむしろ自然に演技に没頭できます。
幅広い音楽性
ガイド:プライベートではどんな音楽を好んで聴いてるんですか?真佐美:J-POPから洋楽、演歌までいろいろ聴きますよ。
ガイド:洋楽はどんなのですか?
真佐美:最近のヒットみたいなのをチェックしたり、こだわって好きなのだとセルタブ・エレネルとか、カーペンターズが好きです。カーペンターズはお母さんの影響ですね。
ガイド:J-POPとか演歌だと?
真佐美:EXILEとかKG、ソナーポケット、倖田來未さん……演歌だと石川さゆりさん、島津亜矢さん、五木ひろしさんですね。
ガイド:実に幅広い!カラオケのレパートリーも幅広いですもんねぇ。
真佐美:カラオケでは最近演歌ばっかりですけどね。あっ、でもLet It Goはマイブームで歌いまくってます(笑)
ガイド:小さい頃に好きだったアイドルとかはいますか?
真佐美:うーん……セーラームーンですね(笑)
ガイド:女の子の永遠のあこがれ的な(笑)三次元のアイドルには興味なかったんですか?
真佐美:小さい頃は三波春夫さんが好きでした(笑)人間のアイドルにはあんまり興味なかったですねぇ。
"歌手"へのあこがれ
ガイド:真佐美さんは歌うことに関してはどんなスタンスなんですか? 舞台で山口百恵さんの『曼珠沙華』を歌ってるのを観たけど、声量があるし歌心も感じました。この前、みんなでカラオケ行った時もチャゲ&飛鳥の『万里の河』をデュエットして「こいつなかなかやるな」と思いましたよ(笑)
ガイド:将来的にもっと歌う機会を増やしたとは思いますか?
真佐美:歌を真剣に勉強したいなとはずっと思ってるんですよ。お母さんからも「私の役を受け継げ」って言われてますし。
ガイド:最近は歌謡ショーに重きを置く劇団が減ってきていると思うので、小林劇団にはぜひ今のスタイルを続けていってほしいですね。みんな「素人の歌を聞かせるよりは舞踊ショーとかに時間をまわそう」って発想なんでしょうけど、小林劇団みたいにちゃんと歌える人たちなら、それが売りになるでしょうし。CD作りたいとか思いませんか?
真佐美:挑戦したいですね。お母さんが昔、歌手だったことを聞いて「私も歌手になりたい」って夢見てた頃もあったから。今も軸は役者だけど、歌の面でももっとお客さんにPRできるようになっていきたいですね。
大衆演劇界No.1ブロガー
ガイド:真佐美さんは2009年からAmebaブログを始めて、今では『演劇ランキング』でたびたび1位になるほどの人気ブロガーになってますよね。ブログを始めるきっかけってなにかあったんですか?真佐美:それまで小林劇団のホームページがあったんですけど、管理をお願いしていた方の都合がつかなくなって閉鎖することになったんですよ。そのままじゃいけないので「じゃあ私がするわ」っていうことでブログを始めたんです。
ガイド:ブログではどんなことを書こうと心がけていますか?
真佐美:積極的に書いていきたいのは劇団のみんなのプライベート風景です。お客さんが普段なかなか見れない楽屋風景とか、仕事が終わったあと何してるかとか。少しでもお客さんが距離を近く感じてくれるように、素の私たちを見せていきたいと思っています。
ガイド:これだけの人気ブログになると、ブログがきっかけで真佐美さんに興味を持ったりお芝居を観に来たりする人も多いんじゃないですか?
真佐美:多いですよ!今月も「ずっと興味があってやっと来れたよ」って声かけてくれたくれた人がいました。
ガイド:いつもコメントつける常連さんって特定できてくるもんですか?実際に会って話したら「あっ、〇〇さんだ!」ってわかったり。
真佐美:全部読んでるから、いつもコメントしてくれる人は話したらだいたいわかりますよ。自分から「あなた〇〇さんですよね?」って当てにかかったりもします(笑)
ガイド:どんなコメントがつくと一番嬉しいですか?
真佐美:やっぱりお芝居をほめてくれるコメントがつくと一番嬉しいですよね。私だけじゃなくて「こういうふうに観てくれてたんだ」って劇団のみんながいつも励みにしてますよ。
一生、役者でいたい
ガイド:これからもずっとお芝居の仕事を続けたいという気持ちは強いですか?真佐美:一生、役者でいたいとは思っています。
ガイド:さっき歌手への興味が話に出ましたけど、プラスアルファでしたいことってないですか?
真佐美:うーん……思いつかないですね。今はなにより小林劇団の今のメンバーやスタイルを守って発展させていきたいという気持ちが強いです。
ガイド:お母さんみたいな女座長になりたいとは思いませんか?
真佐美:あこがれる部分はあるけど、私は自分が座長になりたいとかは思わないですね。私とお母さんは違う人間だし、今の兄弟やみんなのバランスの中で自分の味を出していきたいですね。
ガイド:真さんや直行さんへの対抗心、ライバル心はわきませんか?
真佐美:それは常にふつふつとわいてます(笑)一緒に舞台に立っていて「真ちゃーん」とか声がかかると「なにくそ!」ですよ。負けず嫌いですからね。
ガイド:20代になると恋愛やその先の結婚も現実的な話題になってくると思うんですけど、意識することはありますか?
真佐美:私はまだないですね。いつかは悩むことがあるかもしれないですけど、いろいろ変化が伴うことだから今はあんまり考えたくないんですよね。
ガイド:場合によるけど、結婚すると小林劇団から出ないといけない可能性とかも出てきますもんね。
真佐美:そうですよね。そんな相手が現れたら……ですけど(笑)。でも、今はそんな先のことを考えるより一日一日が精一杯ですよ。毎日、どうすれば最高に楽しめるかで頭がいっぱいです。