洪水被害を受けやすい日本の国土
日本は国土面積の約7割を山地や丘陵地が占め、世界的にも雨量、地震、火山が多く、地域によりますが冬にたくさんの雪が積もります。そのような地理条件や気象条件などが原因となり、土砂災害が発生しやすい国と言えます。土砂災害発生件数は、近10年(平成19~28年)の平均で年1,051件、土砂災害による死者・行方不明者数は平均で年34名、家屋被害戸数は平均で307戸となっています(【表1】参照)。
近年では特に平成29年に多くの土砂災害が発生しており、1年間の土砂災害発生件数1,514件、死者・行方不明者24名、人家被害は701戸と、過去10年で最大を記録しています(【表1】赤枠内参照)。
【図1】に平成29年の土砂災害発生状況(全国)を示します。
人命を奪う危険性が高い土砂災害
自然災害による死者・行方不明者のうち「土砂災害」に占める割合は高く、昭和42年~平成24年までに発生した自然災害による死者・行方不明者数は8540人、そのうちの40%(3,458人)が土砂災害が原因となっています。自然災害のうちでも土砂災害は、人命を奪う危険性が高いことを示しています。※各年の死者・行方不明者のうち、全自然災害については防災白書(平成24年版)による。土砂災害については国土交通省砂防部調べ
「土石流」「地すべり」「がけ崩れ」の違いを知る
では、具体的に土砂災害とはどのような現象をいうのかというと、自然災害のうちの「土石流」「地すべり」「がけ崩れ」の3つを土砂災害と呼んでいます。先ほども触れたように平成29年は近10年で最も土砂災害が多かった年ですが、同年の全国の土砂災害発生件数は1,514件、内訳は土石流313件、地滑り173件、がけ崩れ1028件となっています。それではまずはこの3つの違いを把握しましょう。
■土石流
大雨や雪解け水などが原因で山が崩れ、崩れた土砂が水と一緒に谷を下り、谷の出口で扇状に広がる現象を言います【図2】。
■地すべり
主に傾きの緩い斜面で地面が固まりのまま滑り落ちる現象で、広い範囲で発生するため、建物、田畑、道路などが一度に大きな被害を受けます。川をせき止めた土砂が一気に崩れると土石流が発生することがあります【図3】。
■がけ崩れ
急な斜面が突然崩れ落ちる現象で、崖の下の家も崖上の家も危険です。がけ崩れが起きるとほとんど逃げることができません。大雨や雪解け水が崖にしみこんで緩んだ時や、地震が原因で起こります【図4】。
平成26年8月20日に広島市で発生した大規模な土砂災害は、山を切り開いた新興住宅街を襲いました。降り続く雨が原因で、もともと地中に水分が浸透しもろくなっていたところに急激な集中豪雨を受け、土石流が発生したものと見られています。
※図2~4 画像出典:特定非営利活動法人 土砂災害防止広報センター
これらの土砂災害から身を守るためには、まずは自宅の建つ土地の土砂災害の危険性を知ることが大切です。次のページからは、土砂災害の危険性を知る方法をいくつかご紹介いたします。