イーゴリ・ストラヴィンスキー『火の鳥』
駆け出しの作曲家だったストラヴィンスキーのバレエ・リュス・デビューであり、バレエ・リュスにとってもオリジナル音楽による最初の大ヒット作。絢爛豪華で知られる師リムスキー=コルサコフを既に凌駕する、火の鳥の火の粉が見えるような色鮮やかなオーケストレーション。有名な魔王カスチェイ一党の凶悪な踊りの場面では、強烈なダイナミクス(音の強弱)と不協和音の効果的な使い方で興奮させられます。初演: 1910年、振付:フォーキン、 指揮:ピエルネ、衣装・舞台美術:ゴロヴィン、バクスト(衣装一部)
30代にして既に名指揮者のアンドリス・ネルソンスは個々のフレーズを印象的にメリハリつけて演奏し、生き生きとした色彩感、かつ、鮮烈なことこの上ありません。
イーゴリ・ストラヴィンスキー『ペトルーシュカ』
ストラヴィンスキーの第2弾は、サンクトペテルブルクの街で繰り広げられる三体の人形の悲恋物語。街の喧騒の最中に、捕らえられた熊が通る場面で音楽が一変したり、今のDJプレイにおけるカットアップをオーケストラで行ったようなこれまた斬新作。ハ長調と嬰ヘ長調を同時に鳴らす複雑かつミステリアスな「ペトルーシュカ和音」が使われ、また、親しみやすいメロディーが次から次へ出る音の宝石箱のようです。初演:1911年、振付:フォーキン、指揮:モントゥー、衣装・舞台美術:ブノワ
当時の楽器で演奏する今最も注目される指揮者の一人、フランソワ=グザヴィエ・ロトによる演奏は、繊細で優美なニュアンスが出る楽器の効果はもちろん、華やかさも見事で、初演の当時に連れていってくれるかのようです。
イーゴリ・ストラヴィンスキー『春の祭典』
ストラヴィンスキーの第3弾は、音楽史上に残る大スキャンダルとなった、しかし、今では20世紀の大傑作として誰もが認める傑作。粗野な音の塊と変拍子に満ちた原始主義的な音楽と、大地に生贄として少女を捧げるというロマンティックから遠いテーマ、加えてニジンスキー振り付けによる、それまでバレエでは絶対的に禁止されてきた内股のポーズなど、全てにおいてそれまでの常識を破り、上演中から会場は大騒ぎだったと言います。初演:1913年、振付:ニジンスキー、指揮:モントゥー、衣装・舞台美術:レーリッヒ
指揮者マイケル・ティルソン・トーマスはストラヴィンスキーから直接この曲の解釈について話を聞いており、確信に満ち、キレのある鮮烈な表現と、音楽監督を務める手兵サンフランシスコ交響楽団のパワフルな演奏で圧巻。彼による最良の名盤の一つです。