革命的興行を行った伝説の『バレエ・リュス』とは?
今から約100年前、芸術の都パリは、空前絶後の芸術を目の当たりにし、沸いていました。それは、バレエ・リュス(ロシア・バレエ団)の公演。
それまでバレエというと、チュチュをつけた『白鳥の湖』に代表される優美なものでしたが、ロシア出身の興行師セルゲイ・ディアギレフが主宰したこのバレエ・リュスは、1909年の旗揚げから彼が死去し解散する1929年まで、それまでの常識に全くとらわれず、時には激しく鮮烈に、時にはナンセンスにと、斬新なバレエで一世を風靡。更にピカソ、マティス、ストラヴィンスキー、コクトー、ブラックといった当時の前衛アーティストを次々と抜擢。20世紀前半どころか、人類史上、稀に見る奇跡の総合芸術を生み出し続けました。
起用した芸術家を挙げると、作曲家では、ストラヴィンスキー、ドビュッシー、ラヴェル、ファリャ、レスピーギ、リヒャルト・シュトラウス、プロコフィエフなど。振り付けでは、フォーキン、ニジンスキー、マシーン、ニジンスカ、リファール、バランシン。そして、衣装や美術では、ピカソ、マティス、バクスト、ローランサン、ゴンチャローワというこちらも錚々たるメンツでした。
『魅惑のコスチューム:バレエ・リュス展』の見所
そしてその活動が最盛期を迎えていた頃からちょうど100年の今夏、国立新美術館で『魅惑のコスチューム:バレエ・リュス展』が開催。これは、実際にバレエ・リュスで使用されたコスチューム約140点に、さらにデザイン画など計210点を揃えた、日本では初の衣装を中心とした大規模な展覧会。一級の芸術品である美しさと大胆さを備えた衣装の数々に、今でも当時の興奮が感じられます。ポワレやカルティエなど、ファッション業界にも多大な影響を与えたそうですが、納得できますね。当展の見所は、初期の『シェヘラザード』や『青神』などに見られるエキゾティシズムあふれるバクスト作。古代ギリシアの壺の絵にヒントを得た『牧神の午後』。伝説のダンサー、ヴァツラフ・ニジンスキーが着た『ペトルーシュカ』(立体的な展示のため、まだ彼のぬくもりが残っているようで感動します)。ロシア・アヴァンギャルドの著名作家であるゴンチャローワによるイカやタツノオトシゴのキッチュな『サドコ』。プードルそのままの(笑)『奇妙な店』。マティスらしい『ナイチンゲールの歌』。こちらもデ・キリコらしい『舞踏会』など。全ての衣装が、さぞかし舞台で映え、驚きをもって迎えられただろう、と思う見事なものです。
■魅惑のコスチューム:バレエ・リュス展
日時:~2014年9月1日(月)
休館:毎週火曜(ただし、8月12日は開館)
場所:国立新美術館(乃木坂・六本木)
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