美しい椅子は、バックビューを意識してデザインしている。
家具・インテリアはもちろん、車からファッションなど身の回りの様々なモノが柔らかい形状でデザインされた。とくにアメリカデザインはその象徴的存在。もちろん、北欧でも同様のデザインが生まれた、そんな時代だ。椅子の場合、背板は一番目立つ部分。とくに人が座っている時のバックビュー(後方からの見え方)では、背板しか見えないから、当然だ。
この点は「車」と同様。車も常時見えるのはバック。運転席にいれば自ずとおわかりのはず。バックビューを意識してデザインしている車は、美しい。
椅子もしかり、である。
背板の厚みは、11mm。1mm前後の薄い木の板(単板/たんぱん)を成型積層(何層にも張り合わせ、型にはめてカタチを作る)して緩やかなカーブ面板が出来ている。写真で背板の木口(板の側面)をみるとその様子がわかる。
背板は、後脚の頭部にしっかりと固定されている。
背板の正面から後脚頭部に固定した痕跡が、直径15mmの円形木片でわかる。
後脚頭部の側面を見ると「背板をしっかり支えていまっせ!」(なぜか、関西弁)と言わんばかりにはっきりとした形状としている。流線型の背板と後脚頭部との接点、強度な固定を保証するカタチがココにある。
後脚は太めの中間から上下に細くつぼめ、まるで閉じた傘をたてかけているようだ。中間の太いところは、座面を支える横貫(よこぬき)、後脚同士を支える後貫(うしろぬき)との接合部分。人間の身体のような生体と同様に部分と部分との接合部は太く、その他は細くなっている。ここが椅子の軽やかさを生み出すディテールの一つだ。
中心部を細くした後貫が、効いている。横貫は、脚が広がらないよう、ねじれないようしっかりとした構造を保つ為の重要な構造材。
上部から見て、わかるかなぁ・・・脚との接合部から中心部に向かってわずかに削って細くしている。この「わずかな細み」が、効くんだなぁ。
こうして左斜め後ろから見ると、後脚、後貫の各々の太さ、細さ、流れ、繋がりの関係が生き生きとしている。その結果、軽やかさと美しさを醸し出している。
バックビューを意識してデザインしている椅子は、美しいのだ!
軽やかなディテールは、続く。