親しみやすさと奥深さが同居する、“ジェリクル”な猫たちのミュージカル
『キャッツ』撮影:荒井健
〈こんなファミリーにお勧め!〉
- 猫を飼っている/猫が大好き!(自分勝手だったり、人懐こかったり、目の覚めるような運動神経を持っていたり。そんな猫たちのナンバーを聴くうち、「そうか、うちの猫はロック・スター系なのね」「夜中にゴキブリたちを手なずけているのかしら」「近所の猫たちには“マジシャン猫”なんて呼ばれてるかも」等、身近な猫を見る目が変わる……かもしれないミュージカル。観た後で「どの猫が好きだった?」と親子で話が盛り上がりそうです)
- 込み入ったストーリーは苦手。(作品が描くのは、猫たちの年に一度の舞踏会。それぞれに自己紹介ナンバーが展開し、最後に特別な猫「ジェリクル・キャット」を選ぶというシンプルな構成なので、物語性の高い作品が苦手な大人も、まだ複雑なストーリーは追えない子供も、リラックスして楽しめます)
- 音楽とダンスを思いきり楽しみたい!(クラシックを基調に、猫のキャラクターによってロック風にもオペラ風にも、自由自在に変化するアンドリュー・ロイド=ウェバーの音楽は唯一無二。猫のしぐさを研究し尽くした動きはもちろん、ダイナミックなダンスシーンも満載で、理屈抜きに引き込まれる舞台です)
- 知的な要素も欲しい(ただただ「迫力の歌とダンス」では物足りない…という方もご安心を。本作の原作は英国の詩人T.S.エリオットの詩集「ポッサムおじさんの猫とつきあう法」。難解でシリアスな作風で知られるエリオットには珍しい、遊び心の漂う詩集は単行本化もされ、観劇前後に楽しむことができます。英語教育の一環として、原書版に挑戦するというのもアリ?!)
〈何歳から大丈夫?〉
『キャッツ』撮影:荒井健
〈どんなミュージカル?〉
20世紀英国文学を代表する一人、T.S.エリオットの詩集「ポッサムおじさんの猫とつきあう法」にアンドリュー・ロイド=ウェバーが曲をつけ、再構成したミュージカル。個性豊かな猫たちの、年に一度の舞踏会の様子を描いているだけと見えて、実は人間社会の多様さ、寛容の精神の暗喩的側面もあり、最後には深い感動も得られます。猫たちが「ジェリクル・ソング」「ジェリクル・ムーン」「ジェリクル・キャッツ」などと連呼する「ジェリクル」という言葉、つい既存の言葉かと思ってしまいますが、実はこの作品ならではの造語。「稀有な」といった意味かと思われますが、親子で定義を考えてみるのも面白そうです。
『キャッツ』撮影:荒井健
〈物語〉
都会のゴミ捨て場に集まった、24匹の猫たち。年に一度の舞踏会とあって、猫たちはめいめい自己紹介を繰り広げます。深夜にゴキブリたちを掃除指導するおばさん猫、天邪鬼でみんなと違うことをしたがる“ロック”な猫、落ちぶれた娼婦猫、美食家の政治家猫、泥棒猫のカップル、忘れられた役者猫、鉄道猫、マジック猫、悪党猫……。それぞれにのびのびと、個性豊かに生きる猫たちが最後に選ぶ、天上に行けるただ一匹の猫「ジェリクル・キャット」は誰なのか?
〈2014年夏が楽しくなる!イベントとお土産情報〉
10月上旬まで、『キャッツ』は福岡で上演中。夏休み期間に親子観劇をお考えの方は、8月5日(火)、19日(火)、26日(火)、27日(水)各18時30分公演が狙い目です!この日は小学6年生までのキッズ限定で、開演前に(先着順で)キャッツ・フェイスペインティングを実施。リーダー猫のマンカストラップか女泥棒猫のランペルティーザのメイクを、実際に俳優が使っているのと同じメイク用品を使って施してもらえます。ミュージカルは初めてというお子さんも、このメイクで一気に心ウキウキ。パパ、ママともども、劇中「あれがマンカストラップだね」「ランペルティーザ、あそこにいる!」と自分の“分身”に目が釘付けになるかも……。詳しくは劇団のHPで。
「キャッツ・フェイスパック」。このラムタムタガー&タントミールのバージョンと、マンカストラップ&グリドルボーンのバージョンがある。Photo:Marino Matsushima
*公演情報*『キャッツ』2014年10月4日まで=キャナルシティ劇場
子連れ観劇レポート
『キャッツ』撮影:荒井健 みんなでゴミを拾い集め、汽車を創り上げて歌う「スキンブルシャンクス」
「メモリー」を歌うグリザベラを見て「娼婦猫って何?」と聞かれたら何と答えよう、と親の側は内心ひやひやしていましたが、ただならぬ姿、曲調で登場した彼女を見て、娘は「なんとなく違う世界の人(猫)」として納得できた模様。全編通して、寝台列車の車掌猫スキンブルシャンクスのナンバーを気に入り、猫たちがスキンブルのために集めてきたゴミを掲げながら歌っていると、かなり時間が経ってから「あ、汽車の形だ!」と気づき、大喜びで手拍子を打っていました。
以前、とある子役の女の子にインタビューした際、「4歳の時に『キャッツ』を観て、俳優を目指しました」と言っていたのが印象に残っていましたが、我が家の4歳児はまだまだ無邪気。上機嫌でキャナルシティから博多駅までの途上ずっと、「ジェリクーソン、ジェリクキャッツ、ジェリクーソン、ジェリクキャッツ」と歌いながらスキップもどきをしたり、猫手でまとわりついてきたり。この子もいつかグリザベラや老役者猫ガスの哀愁を理解するようになるのかな、とちょっぴり複雑な気持ちに包まれました。