「減少する日本人口」と「空き家問題」
右のグラフは「日本人口の推移」である。1950年以降、上昇傾向にあった我が国の人口は、2008年にピークを迎えた。その数、1億2,808万人(グラフ目盛は1,000人単位)。以後、減少トレンドに入り、2050年には1億人を割り込む予測。前回の東京五輪が行われた1960年代前半と同程度になるという。人口が減れば、住宅需要も減るだろう。普通ならそう考えるはず。需給のバランスが崩れれば、当然のように価格に影響を及ぼす。「需要<供給」であれば、相場は下落傾向に。どうせ下がるなら焦って買う必要はない、と考えるのが自然だろう。
また、こうした人口減少の件(くだり)にセットのような形で語られがちなのが「空き家の増加」である。下のグラフは「住宅ストック数と総世帯の推移」を表したもの。高度経済成長(に伴う人口増加)に合わせ、公庫・公営・公団(公社)の三大施策で充足した住宅戸数は2008年の時点で約5,760万戸。総世帯(約5,000万世帯)のじつに1.15倍。そして、13.1%にあたる75万戸強が空き家だという。<2013年、住宅総数は6063万戸(2008年比305万戸増)、空き家数820万戸(同63万戸増)となった。空き家率は13.5%と同0.4ポイント上昇:2014年7月30日追記>
空き家の実態
ここで一旦、どこのどんな家が空いているのかを見てみることにしよう。右のグラフは、空き家を種類別に分けたものだ。「二次利用」はセカンドハウス(都心部の拠点)や別荘など。「賃貸用・売却用」は全体の6割程度を占める。一方、近年伸びているのが「その他」。「その他」は人が住んでいない住宅で転勤や入院などの理由から居住世帯が長期にわたり不在、または建て替えのため取り壊す予定の家屋が対象となる。所在地ごとに傾向は分かれるようだ。「二次利用」は山梨県や長野県など別荘用途が集中する地域に。「その他」は山陰など地方で高く、大都市圏では低い。そもそも一都三県は空家率自体が低いのである。
ただし、絶対数は都市部は多くなるわけで、もう少し詳しく記述すると。国土交通省の調査によれば、「東京都心部」の特徴として空き家の継続期間はほとんどが1年以内。すべてが募集に出されていた。「東京都心隣接部」では商業系用途地域で築年数の経過したマンションが目立ったようだ。「東京郊外部」は新しい住宅が多く、比較的狭いのが特徴的。一方、「大阪府」では空家期間が長期化する傾向があり、非募集割合が多いという。高密度(道路の幅員が狭い場所)で築年数の古い共同住宅(木造も少なくない)が目立った。
空家と一言でいっても、そもそも住み手を求めているのかどうかを見極める必要があるだろう。もしそれが役割をまっとうした家屋(だったとしたら)空いたままだからといって市場に大きな影響を与えるとは限らないであろう。空き家問題の本質は「防災・防犯」、「倒壊・崩壊の危険性」、「衛生状況の悪化を防ぐ」などが挙げられることをまずは把握しておきたい。
急増するアジア人口
人口推移をもとにマンションの資産価値を考慮するなら、まずは都道府県、行政区分別に細分化して分析することが前提となるだろう。都心部の高層化や再開発の計画で地域ごとに増減の差があるからだが、それにも増して注目したいのが「アジア人口の予測」である。右のグラフは、世界人口の推移を地域別に表したもの。全世界の人口が驚くほど増加することもさることながら、アジア圏の急増がひときわ目を見張る。無論、この現象が東京の不動産市場に直結するといいたいわけではない。が、前回「交通インフラとマンション選び」でも触れたように人の流れは周辺の不動産の利用価値を大きく変動させるし、日本へ訪れる外国人観光客の増加は近頃見られる「アジア富裕層が東京の高級マンションを購入する」という事例をさらに増やすことにつながるであろうことは論をまたないはずだ。
外資系企業を積極的に誘致する施策のひとつ「アジアヘッドクオーター特区」の成否如何によって、東京の経済は不動産はもとより各産業に多大な影響を及ぼすと見るのが良さそうだ。
そう考えれば、(どの場所でマンションを購入するかにもよるが)人口減少や空家増加などの現象をはるかに超えて、これから予定されている東京への(交通インフラをはじめ特区制度などによる)投資を鑑みることのほうが重要だと考えるのだが、読者の皆さんはどう捉えるのだろう?
【関連記事】
2014年9月以降に販売予定のマンションプロジェクト
【フェイスブック】
高級マンション
Copyright(C)2006 MH3 Inc. All rights reserved.