父・姫京之助とともに名門『劇団花車』をささえる姫錦之助。
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"役者の本分"をわきまえながらも、電飾衣装、プロジェクションマッピングの導入など常に時代の最先端をにらんだ卓越したセンスは大衆演劇界を確実に新時代へと導いている。

存在を隠されていた子供時代

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ガイド:大衆演劇の舞台にデビューされたのが6歳ということですが、それまでは子役とかはされていなかったんですか?


錦之助:僕が4歳のときにこの劇団花車ができたんですけど、ぶっちゃけその頃まで僕は世間に存在を隠されていたんですよ(笑)

ガイド:おお!いきなりすごいカミングアウトをしていただきましたが、さらに込み入った事情を聞いてもいいものでしょうか?


錦之助:僕が生まれた頃がちょうど、父の京之助が松竹新喜劇に行ったりしてすごく人気が出だした時期だったんですよ。

ガイド:家庭があるとわかったら人気にさわるからということでしょうか?


錦之助:それもありますけど、家までつけてくる……今で言うストーカーみたいなファンが何人もいたみたいなんですよ。母も僕も身の危険を感じて家から一歩も出られないくらいだったそうです。

そういう環境だったし父もすごく忙しくてなかなか家にいなかったから、僕は父が何をしている人なのかまったくわかっていませんでした。劇団ができて行動を共にするようになって初めてお芝居というものを知ったんですね。

芝居に夢中の十代 遅すぎた反抗期

ガイド:子供時代の錦之助さんはお芝居に対してはどう思っていらしたんでしょう?

錦之助:すごく好きでしたよ。とにかく舞台に立ちたかったから、学校に行っても「親からお芝居に出ろと言われてる」って先生に嘘ついて帰ったりね(笑)

ガイド:思春期の頃とか「役者したくないな」とか環境への反発心はおこりませんでしたか?


錦之助:親への反抗期みたいな時期はありましたよね。しかも人よりかなり遅くに。僕、19歳、20歳くらいの頃が反抗期だったんですよ。

ガイド:どんな感じだったんですか?


錦之助:父は若い頃めちゃくちゃ怖い人だったので母のほうにばかり当たっちゃったんですよ。今振り返っても母には子供の頃からものすごく愛情をそそいでもらって、僕自身、周囲からは「マザコンじゃないの?」、「恋愛とか興味ないんじゃないの?」って思われてるようなキャラクターだったんですけど、19歳になって一気にその揺り返しが来ちゃった。迷惑かけましたね。
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今もなお輝く『若竹会』世代

ガイド:錦之助さんは十代の頃、神戸の新開地劇場で定期開催されていた『若竹会』というイベントでも活躍されていたんですね。

錦之助:はい。もう15年ほど前になりますが若手を中心に大衆演劇が盛り上がっていたので、それを受けて開催されていた大会ですね。

ガイド:まさに現代の大衆演劇界を担っているそうそうたる面子が出演されていますよね。


錦之助:大川良太郎さん、恋川純弥さん、都若丸さんとかいろんな同世代の役者が参加してましたよね。だから、この世代はほんとにお互い意識することが多かったと思うし、いい意味で競い合ってましたよ。

"股旅"の魅力

ガイド:劇団花車はいろんな演目をお持ちですが、錦之助さん個人としてはどんなジャンルのお芝居や役柄がお好きなんでしょうか?

錦之助:僕はやくざものみたいな役柄が一番やりやすいですね。だから股旅物のお芝居とかは大好きです。

ガイド:演じ手としてどうゆう魅力を感じられるんでしょうか?


錦之助:とにかく男らしくて格好いいんですよね。大衆演劇に限らずアニメとかドラマを含めても、男の人って誰でもヒーロー的な存在にあこがれたことって一度はあると思うんです。僕にとって股旅ややくざものはそういうあこがれを満たしてくれる役柄なんですよね。『清水の次郎長』とか『瞼の母』の番場の忠太郎とか。

父のような役者に

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左・姫錦之助、右・姫京之助


ガイド:お父上、姫京之助さんは若くから今に至るまで大衆演劇界の大スターでいらっしゃいますけど、やはり後継者として意識することは多いですか?


錦之助:もちろん意識しますよ。自分の親をほめるのはおかしいかもしれないけど、僕が小学校や中学校のころの父の人気や存在感は本当にものすごかったですし。

ガイド:今、京之助さんのお芝居を観てどのように感じられるんでしょうか?


錦之助:普段の公演だと「老けたなぁ。そろそろ俺のほうがえぇ芝居するんじゃないか」とか思うこともあるんです。もう五十代だし、それなりに老けもするし体力も落ちてきてますしね。でもここぞと言う時の踏ん張りがすごい。

ガイド:と言いますと?


錦之助:特別な演目や必要なタイミングになるとすごいオーラを放つんですよ。"華"って言うんですかね。一時代を築いた人だからこその、若さとかルックスだけでは太刀打ちできない何かを持っているんだと思います。
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現在、大衆演劇界でブームとなっている『一本釣り』ショーは姫京之助が火付け役。振り付けにあわせて観客がジャンプしたりライトを振るさまはまるで若手アイドルのコンサートのような熱気だ


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京之助が嬌声をあびれば錦之助も負けじと特注衣装に身を包む。父子で華やかさを競い合う舞踊ショーは劇団花車の見所のひとつだ。


座長大会とかでいろんな劇団の座長さんと共演する機会とかになると「特別なスポットライトでも当ててるのか」って思うくらい光り輝いて見えるんです。

ガイド:錦之助さんが目標とするのはやはりそこらへんですか?


錦之助:そうですね。僕も50代、60代になった時に父のように華をまとった役者になっていたい。個性は違うけど、父のような高みに達した役者になりたいですね。

父とゴルフ

ガイド:京之助さんとはよくゴルフに行かれるんですよね。

錦之助:はい、父の影響で14歳の頃からゴルフをやってるんですよ。「あんた役者するよりプロゴルファーしたほうがいいんじゃない?」って言われるくらい素質はあったらしいですよ(笑)

ガイド:それってどうやねん!って思いますよね(笑)

でもお芝居やってると全国回りながらいろんなコースに行けるからいいですね。

錦之助:そうなんですよ。だから分厚いゴルフ場のガイドブック買って「この地方に行けばこのコース回れるな」とか父とよく話してますよ。

ディズニーランドが大好き

ガイド:ほかにご趣味はありますか?

錦之助:僕、ディズニーランドが大好きなんです。17歳の時に今の女房とデートで初めて行ったんですけど、それが遊園地初体験だったんです。「なんて夢の国なんだ」ってびっくりしましたよ。

ガイド:仕事柄、自分が楽しむ側に回る機会ってなかなかないんですよね。


錦之助:そうです。それまで自分の楽しみって踊ること、芝居すること、あとせいぜいゴルフくらいしかなかったから、カルチャーショックでしたよね。それから4日連続で通いましたよ(笑)今でも年末には、絶対にディズニーホテルに宿をとって遊びまくってます。

常に新しい興奮を取り入れて

ガイド:楽しむ側として遊びに行きながらも、ついついお仕事に活かせるものがないかとか考えちゃいませんか?

錦之助:それは間違いなく考えちゃいますね(笑)たとえば、うちの名物”電飾花魁ショー”はエレクトリカルパレードをヒントにして考案したものなんです。
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ガイド:そうだったんですね!何回か見せていただきましたが、暗闇の中でキラキラ舞っている姿には旧来の舞踊に無い、幻想的かつ刺激的なエンターテイメント性を感じました。


錦之助:常に新しくありたいんです。古い要素を残しながらも常に時代の新しいものを取り入れていくのが大衆演劇のあり方だし、劇団花車の方針だと思っています。近々にはプロジェクションマッピングの技術を導入することも検討しているんですよ。

これからの若手に伝えたいこと

ガイド:錦之助さんは今、劇団花車の座長として、ベテランとして弟さんたちをはじめ若い役者たちを導いてゆく立場におられると思います。これからの若手に伝えていきたいことはなんですか?

錦之助:やはり第一には芸を磨いてほしいです。それも、積極的にゲストに行ったり大会に出演したりしていろんな人の技術を学んでほしいですね。

ガイド:やはり自分の劇団だけじゃなく、いろいろ外に出て勉強する機会があったほうがあったほうがいいと思われますか?


錦之助:絶対にそうだと思いますよ。僕も十代で「俺は上手い」って天狗になってた時期があったけど、いろんな大会に出演して共演者と比較されることで反省して客観的に自分を見れるようになりました。

また里見要次郎さん、大日方満(おおひがた みつる)さん、小泉のぼるさんのような一世風靡された大先輩たちと交流する中で、とてもいい勉強をさせていただきました。

役者の品格とは

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錦之助:それともう一つは、役者としての品格を持ってほしい。ほんの一部ですけど、今の若手役者たちの中にはぬるい風潮が出てきているようにも感じるんです。それを少しでも正していきたいなと思います。

ガイド:どういった面でしょうか?


錦之助:公演が終わってお客さんを送り出す時の態度ですよね。「来てくれてありがとうございます」って感謝を伝えるのはいいんだけど、ほっぺたをくっつけたり、後ろから抱きつくようなポーズで写真を撮らせたり……ホストの真似事みたいになってる人がいるのでそれは違うだろうと思うんです。

ガイド:先々のことを考えたら業界全体のためにも良くないですよね。


錦之助:そうなんです。そうゆうことが目当てのお客さんを招いてしまいますからね。大衆演劇の世界ではお客さんからご祝儀をいただくのが慣例になってるとは言っても、それは役者が良いお芝居をしたことに対する特別ボーナスなんであって、最初からそれを目当てにしてお客さんに近づいてはいけないです。

僕も弟たちには「たとえ千円でも五千円でもご祝儀をいただけたらそれは有難いことなんだ。当たり前だと思うな。」と言って聞かせるんです。「僕たちは役者であってホストじゃないんだから」ってね。
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