演歌・歌謡曲/ロックンロール

キャロルのDNA 「坂本つとむwithケンイチ大倉」

2014年4月13日、一年におよぶ癌との闘いに一区切りをつけ気合のステージ復帰を果たしたジョニー大倉。長く厳しい闘病生活の間、彼を支えたものはかけがえのない家族、仲間だった。大倉家の長男ケンイチ大倉とジョニーを芸能界の父と慕う坂本つとむによるユニット『坂本つとむwithケンイチ大倉』の活動全容を鮮やかに解き明かす。

中将 タカノリ

執筆者:中将 タカノリ

演歌・歌謡曲ガイド

『坂本つとむwithケンイチ大倉』

7月5日、京都のライブハウス『シルバーウィングス』はリーゼントやポニーテールできめこんだロックンロールファンであふれ返っていた。ただでさえ蒸し暑い京都の夜だったが、防音ドアを開けて一歩中に入るとさらに気温が5度は増したかのような熱気とグリースの甘い香りにつつまれる。
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地元・京都を中心に活躍する『リーリールイス』


彼らの目当てはこの日出演する地元のキャロルバンド、ロックンロールバンド……そしてなんと言っても『坂本つとむwithケンイチ大倉』だ。
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坂本つとむwithケンイチ大倉

『坂本つとむwithケンイチ大倉』は1994年に『テディボーイズ』でデビューして以来のベテランロックシンガー・坂本つとむとジョニー大倉の長男・ケンイチ大倉によるユニット。奇しくもジョニーの癌が発覚する直前に結成され、以降、ジョニーがステージ復帰する過程に密接に関わりながら活発なライブ活動を行っている。

インタビュー 結成のいきさつ

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左から人気DJ・SKAT白井、ケンイチ大倉、ガイド・中将タカノリ、坂本つとむ


ガイド:お二人でユニットを結成したいきさつを教えてください。

ケンイチ:以前から父のライブでたびたび共演してたんですよ。それで二人でキャロルのカバーとかしてるうちに意気投合して「せっかくだから何かやろうよ」ってなったんです。

坂本:そうですね、どちらからともなく。

ガイド:それがジョニー大倉さんの癌が発覚する直前だったわけですね。

ケンイチ:はい。その時点ではここまでの活動をすることになるとは思ってもいませんでしたけどね。それが紆余曲折があり、癌が発覚して次の月からは二人で『ジョニー大倉応援ライブ』というツアーライブで全国を回ることになりました。

相性バッチリ ”キャロルのDNA”

ガイド:早い時期からオリジナル曲も作っておられますね。

ケンイチ:僕が闘病中の父を想って書いた『月に抱かれて ~Moonlight Love~』という歌詞に坂本が曲をつけてくれたのが初めですね。
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『月に抱かれて~Moon Light Love~』は坂本つとむソロシングル『雨に濡れても』のボーナストラックとして収録されている


 

ガイド:実際に一緒に活動を始められて、お二人の相性はいかがですか?

ケンイチ:最高ですね。坂本がちょっと年上なので、兄貴と弟みたいな感じで。一緒にいる時間が長いので、今では考えてることとかもツーカーになってきました。

坂本:もう一年以上だもんね。ほんとに仲良くやれてますよ。詳細は言えないけどケンイチはお酒入ったらとことん酔っ払うから面白い(笑)

ガイド:音楽面ではいかがですか?作詞をケンイチさん、作曲を坂本さんが分担されてますがどちらが先に作るとかは決まってるんですか?

坂本:それは別に決まってないですね。さっき話に出た『月に抱かれて ~Moonlight Love~』はケンイチから先に歌詞を作ったんですけど、『JOHNNY BE BACK!!』って曲だと僕が先にメロディーを作りましたし……しかしケンイチはすごくいい歌詞書きますよ。やっぱりジョニーさんのDNAなのかなと思いますね。

長いブランクを越えて

ガイド:俳優のイメージがあるケンイチさんですが、高校時代にはバンドを結成されていたそうですね。
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ケンイチ大倉俳優デビュー作『嵐の中のイチゴたち』2014年3月までは『毛利賢一』名義。


ケンイチ:ビートルズのコピーバンドをやってました。

ガイド:ジョニーさんも大のビートルズ好きですが、やはりその影響があったんでしょうか?

ケンイチ:そうですね。キャロルのことはあまり知らなかったけど、父が当時やっていた『THE PLEASE』(※メンバーに内海利勝、高橋ジョージら)を観て「こんなかっこいい音楽があるのか!」とびっくりして自分でもビートルズを聴いてバンドを始めたんです。

ガイド:今回、音楽活動を再開されるまでどれくらいのブランクがあったんですか?

ケンイチ:うーん……もう20年以上ですよね。途中にもNHKのドラマでギターを弾いたりしたことはありましたけど。

ガイド:本格的に音楽活動をされるにあたってご苦労はありませんでしたか?

ケンイチ:いっぱいありましたよ。音楽は趣味としては好きだったけど、絶対に仕事にするつもりはありませんでしたから。つい最近まで「音楽では父には絶対かなわないけど役者なら自分の個性を発揮できるんじゃないか」と思っていたんです。

ガイド:それが吹っ切れたのはやはりジョニーさんの病気があったからでしょうか?

ケンイチ:やはり父が倒れたことがきっかけですね。「音楽でも自分らしさを発揮して、本格的にやっていこう」と。

ガイド:音楽に関してはかなりベテランの坂本さんですが、この一年でケンイチさんの変化を感じられることはありますか?

坂本:短い期間でかなりの場数を踏んできましたしね。ほんと、一緒に始めた頃より数段上達してると思いますよ。

非難ごうごうのスタート

ケンイチ:でも初めは非難ごうごうでしたよ……ブログにも思いっきり悪口書かれて。

ガイド:ジョニーさんに対するネットの中傷もそうでしたが、本人の気持ちを知らずに浅はかなことを言う人がいるんですよね……

ケンイチ:なかなか自分たちの想いを伝えられなかったのは残念です。

ガイド:でもユニットの活動も一年を越え、4月の『ジョニー大倉復活』イベントも全国的な注目を浴びましたしテレビ等の報道のされ方やネットでの反応では「風向きが変わってきたんじゃないかな」と思うところがあります。

ケンイチ:そうですね。地道に一年やってきて、実際に僕たちのライブを観ることで納得してくれる人も多かったと思いますし。

"神様"から"親父"へ

ガイド:お二人の活動についてジョニーさんは何かおっしゃりますか?

ケンイチ:最初は「お前、大丈夫か?歌えるのか?」と心配していましたが最近では「がんばってくれてありがとう」と喜んでくれています。全国のファンからの暖かい声も直接持って帰れますしね。

ガイド:大倉家を一番身近で見ておられる坂本さんですが、坂本さんにとってジョニーさんはどんな存在ですか?

坂本:僕は三重県出身なんですけど、キャロルにあこがれて東京に出てきたんです。そうして音楽活動しているうちにジョニーさんと一緒にステージやらせていただく機会があったんですけど、はじめは”神様”でしたよね。

そして親しくさせていただくようになって、こうやってケンイチと一緒にユニットもすることになって……今では本物の”親父”みたいな気持ちでいます。自分の親父がもう亡くなってしまってるからかもしれませんけど。

ガイド:やっぱりジョニーさんは人に”親父”とまで思わせる温かみのある人なんですね。
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がんが発覚する以前のジョニー大倉とともに坂本つとむwithケンイチ大倉


二人ならではの音楽を!

ガイド:今後の活動の抱負はなんでしょうか?

ケンイチ:単に"ジョニー大倉を応援する"というだけではみんなに認めていただけないと思うので、二人ならではの音楽をもっと打ち出して飛躍していきたいですね。

坂本:そうですね。二人ならではの音楽で。『月に抱かれて ~Moonlight Love』や『JOHNNY BE BACK!!』というオリジナル曲たちをもっと世に広めてヒットさせたいと思っています。

坂本つとむwithケンイチ大倉 in ロックンロール・ナイト

この日、5組の出演者のトリで出演した『坂本つとむwithケンイチ大倉』。
二人がステージに登場すると、客席から嵐のような歓声が巻き起こった。
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揃いの白いマフラーで登場した坂本つとむwithケンイチ大倉


切り裂くようなギターの音色から『JOHNNY BE BACK??』、『月に抱かれて ~Moonlight Love~』、『白い教会 ~セレナーデ~』といった自慢のオリジナル曲……そして『ファンキー・モンキー・ベイビー』、『彼女は彼のもの』などのキャロルナンバー……

一曲が終わるごとに、すでに踊り疲れて汗だくになった観客たちが最後の力をふりしぼって煽りを入れる。
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フロアにはロックンロールファン達のパッションがあふれる


彼らが心を酔わせているのはステージのケンイチ大倉が"ジョニーの息子"だからではない。そこに本物の"ロックンロール"があるからだ。予定時間を大きく上回り、夜更けまで熱いロックンロール・ナイトは続いていった。
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最前列で応援していた子供たちをステージに引き上げ、ほのぼのする一幕も


今後の坂本つとむwithケンイチ大倉に期待!

坂本つとむとケンイチ大倉。二人のステージングは激しさと繊細さが入り交ざり、時にコミカルで観る者を飽きさせない。また、ケンイチ大倉の父譲りの繊細でロマンチックな歌詞と坂本つとむのポップセンスあふれる曲の相性はバッチリだ。

個人的にはすでに"ジョニー大倉応援"の域をはるかに超えたアーティスト性を感じている。

今後の彼らの活動が果たしてどのような展開を見せるのか。このコーナーで引き続き紹介してゆきたい。
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