床ずれを栄養の面からサポートする
不思議に思われるかもしれませんが、実は床ずれは「むくみのある人」や「痩せている人」に多く発生します。太っているほうが圧力はかかりそうなものですが、脂肪が多いと、骨の露出が少ないのでこすれ際の摩擦が小さいのです。「むくみのある人」や「痩せている人」に多いのは、いわゆる「低栄養状態」、専門用語でいう「PEM(protein-energy malnutrition、ペムと読みます)」です。Proteinはたんぱく質のことですので、たんぱく質とエネルギーが不足した状態です。PEMには大きく3種類があり、床ずれに関連するPEMの意味をざっくり説明すると「身体の組織を作るための栄養が足りない」ということになります。それはすなわち「身体の組織を作るための栄養=主にたんぱく質」が足りないのです。
そこで、床ずれの治療には良質のたんぱく質を多く含む食品を食べることが大切です。さらに、亜鉛、鉄などのミネラルが必要だと言われたり、アルギニンやグルタミンなどの条件付の必須アミノ酸が必要だと言われることもあります。とはいえ、一番大事なのは「たんぱく質」の補給です。
食が細くなって痩せてしまったお年寄りに「お尻の痛いの(床ずれ)が治るからお肉を食べて!」と言ったところで、なかなか食べてはもらえません。そこで、病院等では高エネルギー・高たんぱく質の補助食品(ゼリーや飲み物)を提供したりすることもあります。各社によって床ずれ対策として販売されている商品は、現在、必要だと言われているものがすべて含まれています。
さまざまなコンセプトの商品があり、それぞれの管理栄養士にお気に入りの商品があると思いますが、私が気に入っているのはヘルシーフードから出ている「たんぱくんパウダー」という商品です。お粥に混ぜ込むふりかけのようなものですが、患者様に提供してみると、非常によく食べていただけるのです。何よりも“かさ”が増えないため、お年寄りの負担が減ります。自然の食品をベースに作っているということも聞いていますし、その点でも、安心して提供することができます。
実際に何人かの患者様に試していただいたところ、看護師さんから「治りが早くなった」というお声をいただいています。お値段的にも他社製品よりも廉価なので、非常に気に入っています。(ただし、エビデンス(根拠)はありません。エビデンスの有無を気にする施設・管理栄養士の場合は、多少、お値段が張っても他社製品を選ぶよう指示されると思います。)
ただし、たんぱくんパウダーを含む高たんぱく質の補助食品を使用する前には、必ず腎臓に負担がかかっていないことを医師に確認してください。
もっと、そばにいて……。
床ずれは見ているだけでも、心が痛みます。もっと早く何とかしてあげることはできなかったのか、と悔やむこともしばしばあると思います。それは医療スタッフも同じ気持ちです。1秒でも早く「赤くなってるけど、大丈夫かな?」とお年寄りの背中やおしりなど、圧力のかかりそうな部位を見て、異変を見つけて差し上げること。これが、後悔のない介護につながるように思います。そのためには、介護する人は1分でも長く、お年寄りのそばにいて下さい。介護をする人は厨房に立っている時間はもったいないのですよ!