史上初の“10勝&10本塁打”も夢ではない
投手でここまで7勝、打っては5本塁打20打点で、昨年の3本塁打20打点を上回った。
20歳の誕生日を自ら演出するワンマンショーの幕開けは、一回一死二塁の第1打席だった。左翼席(応援団)からバースデーソングが流れる中、精神を集中して、2球待った後の3球目。大谷はスライダーを狙っていたが、左腕・藤岡が投じたのは138キロのストレート。しかし、体が勝手に反応してバットの芯でとらえる。打球は右打者が放ったようなライナーで左翼席へ突き刺さった。
「すごく嬉しい。左翼席からバースデーソングが流れていたので、初球を振っていいのかな、と思ったんですけど、終わった後だったのでよかったです」
打席でファンに気を遣うとは、とても20歳を迎えたばかりのプロ2年目の若者とは思えない落ち着きぶり。しかも、狙いダマが外れたにも関わらず、スタンドまで持っていくあたりはベテランの域と言ってもいいだろう。
圧巻だったのが、九回二死三塁で迎えた第5打席。右腕・金森の内角ストレートを右翼席最上段へ豪快に運んだ。右翼・角中が1歩も動かないほどの1発。直前に右すねに自打球を当てた。「内角の真っすぐを足に当てたので、同じ球を投げてくると思いました」と読み勝ちで、だからこそ内角ストレートでも踏み込んでフルスイングができたのだ。
この打撃に関して栗山監督は、「配球や駆け引き、バッテリーの考え方を感じ取れなければ難しい。その部分では経験を生かして前に進んでいる」と2年目の成長、進化を評価した。休日でも外出を控え、黙々とトレーニングに打ち込んでいる成果が出たといえる。
投手でここまで7勝、打っては5本塁打20打点で、昨年の3本塁打20打点を上回った。残り試合を考えると、史上初の“10勝&10本塁打”も夢ではなくなってくる。
大谷の“二刀流”に対しては相変わらず賛否両論がある。とくにメジャーリーグのスカウトたちの多くは、早く投手に専念して欲しいと願っている。「打撃も悪くはないが、あのレベルの打者は多い。しかし、160キロを投げる投手はそうはいないからね」というのがその理由。しかし、この日のように1試合2ホーマー、4打点を稼ぐ20歳の打者もそうはいない。投手か打者を選ぶのではなく、行けるところまで二刀流を続けてみるという選択が、今の大谷には適しているのかもしれない。