ドラマ/朝ドラ・昼ドラ・二ドラ

なぜか観てしまう昼ドラに潜在する9つのルール(3ページ目)

誰にとっても「これぞ昼ドラ」の思いがあるようです。ドロドロの愛憎劇「昼ドラ」に潜在するルールを考えてみました。

竹本 道子

執筆者:竹本 道子

ドラマガイド

ルール6:貧富の差を大胆に描く

札束

札束

『碧の海~LONG SUMMER~』の主人公は社長令嬢。恋に落ちる相手はお金に困っているつぶれかけた民宿の息子です。怨恨や愛憎劇の背景に金銭問題が絡むことは少なくありません。貧富の差は社会派ドラマや企業ドラマに見られるマネーゲーム的要素ではなく、人間関係を崩壊させる決定的な要因として描かれます。そして貧富の差は、昼ドラの代名詞「運命」にも直結するのです。引き裂かれる愛、妬み、事件は滞ることなく起こり、視聴者は次の展開までじらされることがありません。

 


ルール7:猛烈なスピード感

破綻、転落、「えっ、えぇ~」と主人公の人生は猛スピードで展開していきます。登場人物がすでに激変していて、その過程が後付けなんてこともしばしば。じっくり考えないよう誘導する昼ドラは、不条理な人間に腹を立て、更生を望む余裕を与えません。昼ドラはドロドロではあるものの、ドロドロを掘り下げて見るドラマではないようです。


ルール8:めんどくさいことが好きな登場人物

人は基本的に面倒なことが嫌いです。面倒なことには関わりたくありません。ところが昼ドラの登場人物たちはめんどくさいことを相当好みます。

脈なしの好きな人のところに出向くとか、恋敵に挑戦的なことを言いに行くとか、恋敵を不幸に落とし入れる罠を仕掛けるとか。迷惑甚だしいその行為が「ドラマ」を生むのですが、めんどくさい昼ドラは他人事だけに愉快です。

面倒なことは嫌いだけど面倒な人を見るのは面白い、という視聴者心理を熟知しているとも言えます。昼ドラ恐るべし。

 

ルール9:昼ドラを支えるのは視聴者のバランス感

この記事を書きながら「人は爽やかなドラマばかりを見たいわけではない」と改めて感じます。

ハリウッド的スケールの作品ばかりを見たいわけでもありません。時にドロドロした他人の不幸を覗き見たいようです。ただし陰湿ではなく、視聴者は至ってカラッとしています。「切羽詰まった不幸」ではなく「あり得ない不幸」だからこそ、どっぷり浸かることなく視聴できるのです。

登場人物が呪縛されるほど、視聴者は距離を保ち視聴する。それはとてもいいことです。後味が悪いままでは、買い物、夕飯の準備を控えた午後を過ごす気になれないですし、感情移入で号泣しているところにランドセルを背負った子どもが帰宅、なんてのも困ります。

そんな風にならない昼ドラの楽しみ方を視聴者は心得ているのです。この視聴者のバランス感こそが、昼ドラの歴史を支えているのでしょう。


もちろんハートフルな昼ドラも忘れてはいけません

どこか媚薬的な匂いのする昼ドラですが、その効用はおそらく登場人物のみ。視聴者にとっては奇々怪々で滑稽な世界、昼ドラは独自の文化を育てていると言っていいかもしれません。

もちろん、春休みや夏休みに夢中になった『キッズ・ウォー』や『天までとどけ』といったハートフルな作品も忘れてはいけませんね。


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