「『日本酒・ビール・ワイン、睡眠の質をより向上させるのはどれ?』って、あなたいったい何を言っているの? どのお酒も、適量なら気持ち良く睡眠を誘ってくれるじゃないの」

という返答は、ごもっともです。しかし、最近の脳科学と細胞のコミュニケーションの研究から、清酒の醸造に使われる「清酒酵母」に“睡眠の質”を高める効果があることが発見されつつあります。


睡眠・覚醒に関する脳科学と細胞のコミュニケーションの仕組み

コーヒーや濃い緑茶を飲むと、眠気がなくなりすっきりした気持ちになる経験は、皆さん感じたことがあると思います。この効果はコーヒーなどに含まれるカフェインの効果なのですが、これがどのように脳に働きかけているか、ということが最近になって初めて解明されました。

SlepingCat

「清酒酵母」で人間はより深く睡眠できそうなのだが、はたして猫にはどうなのか?


脳の神経細胞の表面には、種々のホルモンや細胞のコミュニケーション物質(サイトカイン)を感じることのできるセンサー(Gタンパク受容体、種類は1000種類くらいある)があります。Gタンパク受容体が、コミュニケーション物質のひとつの睡眠物質(アデノシン)を感じることで、私たちは眠気を感じます。

カフェインと睡眠物質であるアデノシンは形がよく似ており、睡眠物質より先にGタンパク受容体にカフェインがくっつくと、睡眠物質(アデノシン)を感じることができなくなり、眠気がなくなるというものです。

このGタンパク受容体のメカニズムを発見した米国の科学者は2012年のノーベル化学賞を受賞しています。

余談ですが、これらの受容体はまことに変な形をしています。なんと、細胞膜を針で糸を縫うがごとく7回も貫通して(受容体をミミズに例えると、ミミズが体をくねらせて土の表面を7回出たり入ったりしているような感じ)、細胞の外側と内側をつなぐセンサーの役目をしています。

この発見は、薬の世界においても重大な意味をもっています。Gタンパク受容体を標的とする薬は高血圧、うっ血性心不全、潰瘍、ぜん息、不安症、アレルギー、ガン、偏頭痛、パーキンソン病などさまざまな病気の治療に使われていて、現在用いられている薬の約半分以上を占めてるとのことです(ビックリ!)。

さて、これで脳の神経細胞のコミュニケーションのしくみのイメージが、大ざっぱに理解していただけたと思います。


「清酒酵母」には、深い睡眠を誘発する効果が!

肝心の「清酒酵母」の効果としては、深い睡眠を誘発するGタンパク受容体の活性化能を著しく高める効果があることが発見されています。ヒト臨床試験を行われた脳波測定の結果から、「清酒酵母」の摂取により、深い眠りの指標となるデルタ波パワー値が増大することが世界で初めて確認されました。

清酒酵母の効果の源は、出芽するときに発生するフェロモンであるらしく、「日本酒」では精製過程の途中でほとんど分解されているので、日本酒・ビール・ワインのうち、睡眠の品格を向上させる効果は、あまり差がないというのが答えです。ただ、この清酒酵母は、日本人としてなじみの深い「酒粕」にはたくさん含まれています。

その成分は日本食品標準成分表によると、水分51%・炭水化物23%・蛋白質13%・脂質・灰分となっており、他にも、アミノ酸・ビタミン・酵母などが含まれているので、栄養素に富んだ食品としての価値が見直されています。

今日は、ぐっすり眠れる酒粕料理と日本酒でいかがでしょうか。様々なおいしいレシピ集を以下に紹介します。

■酒粕レシピ・作り方一覧(AllAbout)


<参考資料>
「清酒酵母」に“睡眠の質“を高める効果があることを世界で初めて発見!
ライオン株式会社プレスリリース2014年5月13日

新しい受容体メカニズムの解明と創薬
東京都神経科学総合研究所

Gタンパク質共役型受容体(GPCR)のユビキチン化を介したエンドサイトーシス機構
〔生化学 第82巻 第7号2010年 7月〕

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