パナホームが開設した「ビューノプラザ」とは
「ビューノプラザ」があるエリア周辺は、木密地域の特区が含まれる場所であり、さらに人が集まる人気のエリア。要するに、店舗併用住宅や賃貸併用住宅といった多層階住宅のニーズがある地域です。ここでは多層階向けの重量鉄骨造の構造体が確認できるほか、各種セミナーなども開催されているそうです。特にユニークなのが、近くに実際の多層階の事例や施工現場があること。地域に特化した拠点ですから、このようなことができるわけで、要するに住宅展示場にわざわざ行かなくても、構造の特徴を確認したり、税制といった建て替えに関する様々な疑問や心配事をひとまとめに聞きに行ける場所なのです。
近年、大手のハウスメーカーを中心に、3階建てを中心に都市部における建て替え需要の獲得が熱心に行われており、新商品の投入なども盛んですが、このような地域密着型で私たちにとって身近な拠点は少なく、だから私はユニークだと感じるのです。
ちなみに、構造的には従来、防火地域や準防火地域ではコンクリート系や鉄骨系の住宅が主流となってきましたが、近年は木造住宅の耐火性能が向上し、階数は別として(4~5階建てには対応できるレベルにあります)木造住宅でも最近は多層階の実例が見られるようになってきています。
さて、なぜ今、大手ハウスメーカーが木密地域のような場所に積極的な展開を見せているかというと、一つは相続税制の改正などによるニーズの高まりがあるのですが、さらにコスト面で優位性が出てきたという点も見逃せないように思われます。
ハウスメーカーが住宅密集地に積極的に進出
というのも、これまで木密地域に多かったあまり敷地が大きくない多層階の建物の建設は、その多くを中堅あるいは小規模のゼネコンが引き受けてきました。ただ、彼らはこれまでの建設不況で数が減り、さらに建設資材の高騰で引き受け手が少なくなってきているのです。大手ハウスメーカー、特にプレハブ系ハウスメーカーでは部材を工場で生産していることから、現場施工が少なくすみ、結果的に短工期が実現され、コスト競争力が発揮できるようになってきたというわけです。例えば、同じ規模の建物を建てる場合でも、数千万円レベルの差となることもあるといいます。
それから、仮に賃貸住宅併用住宅を検討する場合では、ハウスメーカーの多くが賃貸住宅事業を展開していますから、そのノウハウを生かせることなども強みとなっているようです。要は、賃貸住宅に関する入居者募集や管理などの各種サービスをワンストップで受けられるということです。
ただ、とはいっても実際に建て替えを検討される場合は、ゼネコンも含め複数の企業と商談されることをお勧めします。住宅を建てるということは慎重さが必要ですし、最終的には建設費だけでなく人間関係など様々な検討が必要になるのですから。
ところで、話を「ビューノプラザ」に戻すと、その見学で私が感じたのは、このような地域に根ざした拠点がなぜ必要なのか、ということでした。違う表現をすれば、各自治体が行っている木密地域解消のためのセミナーや相談会がこれまで機能していなかったのではないか、ということでした。
例えば、各自治体では建て替えの相談には乗ってくれますが、それに準じた相続税対策の情報や、賃貸住宅経営の注意点は教えてくれません。それでは木密地域の建て替えは促進されないと思うのです。
そういった意味で、今回の「ビューノプラザ」のような皆さんの地域に密着した、何でも気軽に相談できる施設は実に、消費者ニーズをつかんだ取り組みであり、貴重だと考えられます。お近くの方で、建て替えに関心のある方なら、ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。