首都直下型地震で大きな被害が予想される木密地域
昨年末、国の中央防災会議はM7級の首都直下地震の被害想定を見直しました。その内容は、最悪2万3千人の死者が出るとしたほか、地震火災による焼失は最大約41万2000棟、建物倒壊などと合わせ最大約61万棟に拡大するとされています。首都直下型地震が発生すれば、地震火災なども含め大規模な被害が発生すると懸念されており、その対策が求められている(写真はイメージです)
「木密」とは木造住宅が集まるエリアのことをいいます。東京都には23区内を中心に数多くの木密地域があり、首都直下型地震など大災害が発生した場合、そこが地震火災で最も大きな被害を出す場所とされ、その解消が長く課題となってきました。プロジェクトの方針の柱は以下の二つです。
・市街地の不燃化を促進し、燃焼による焼失ゼロの「燃えないまち」を実現
・延焼遮断帯の形成を促進し、「燃え広がらないまち」を実現
このうち(1)については、整備地域における不燃領域率を2020年度までに70%とする、(2)については整備地域における主要な都市計画道路の整備を2020年度までに100%とする、という内容です。要するに、災害に強く、中でも火災の発生にあたって燃えにくい建物(住宅を含む)を増やし、災害に強い街づくりを目指しているのです。
相続税増税問題でも注目される木密地域
この中で都は区と連携して、市街地の不燃化を進めるため「特区」を選定し整備。さらに地域における防災のための街づくりの気運を高めようと努めているのが現状です。少々難しい内容に感じられるかもしれませんが、ポイントとなるのが老朽化した家屋の建て替えの促進です。不燃化特区の指定を受けた地域内で、不燃化のための建て替えを行った住宅については、以下の要件を全て満たす場合は、固定資産税・都市計画税の減免(5年度分)などといった優遇制度が用意されています。なお、老朽化した住宅を取り壊した場合も、土地に対する固定資産税・都市計画税の減免されます。
ただ、プロジェクトはなかなかうまく進捗していないようです。木密地域は権利関係が複雑な場所ですし、ただでさえ建て替えをするのには多額な金額がかかります。また、高齢者がお住まいの住宅も多く、収入が年金だけでは建て替えようという考えが出てこないのも、わからなくはありません。
木密地域の解消を阻害する要因として以上のようなものがあるわけですが、一方では木密地域というのは実は大変地価が高く、便利な場所にあることも事実です。要するに、二世帯住宅や賃貸住宅、店舗、あるいはそれらの複合型など土地を高度に利用する条件が整っているエリアでもあります。
来年2015年1月からは相続税・贈与税の税制改正が行われます。これは、相続税の基礎控除額が減る、つまり、これまで相続税がかかっていなかった人、あるいは少なかった人も課税対象額がアップするという内容です。また地価が高いエリアは、その分課税対象になる人が増える割合も上がることになります。
このような条件から、木密地域などでは建て替えをし、土地を有効利用する方が税制上、有利になるとされています。
もっとも賃貸や店舗は立地条件もからみますから必ずしも有利とはいえませんが、このようなことから木密地域の建て替えを促進しようという動きが今、動きをみせています。次のページでは、その中でユニークな取り組みをしているハウスメーカーの取り組みを紹介しながら、木密地域の住宅のあり方を考えていきます。