原作も映画も大ヒットした忘れられない復讐劇
『告白』(2010年)中学校の終業式で、自分の娘が殺されたこと、その犯人がこのクラスにいることを告白した女性教師(松たか子)の復讐のドラマ。音楽やPVのようなポップな映像が挿入されているのに、どこか生々しい恐ろしさが宿るミステリー。
すでに大ベストセラーであった湊かなえの原作は、登場人物の独白というスタイルであり、映画化が難しい小説でした。にもかかわらず、女教師の独白シーンを鍵に、娘殺しの犯人探しと同時に女教師の復讐が実行されていく構成でグイグイと見せていく中島演出はさすがです。また役者陣もすべて素晴らしく、とりわけ生徒たちの熱演は印象深い。陰湿な少年を演じた西田幸人、その友だちを演じた橋本愛は、この映画の成功を握る役でしたが、彼らの素晴らしさが『告白』を傑作に押し上げています。
女教師の娘殺しの犯人は?という謎から始まり、犯人との頭脳合戦になっていく展開にはワクワクさせられます。すべての人物が語っていることが真実か嘘か妄想か……何を信じたらいいのかわからないので、見ている間、ずっとゾワゾワと悪寒が走るのがたまらない。またラストシーンの解釈は見る人によって感想が分かれそう。中島監督ならではのスリルが味わえるミステリーの怪作です。
監督:中島哲也 出演:松たか子、木村佳乃、岡田将生、西井幸人、藤原薫、橋本愛ほか
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