平成27年介護保険制度改正の概要
改正案は衆議院を通過
ただし、改正は国会の可決により即実施となるものや、審議に時間を要するものも想定されますので、若干のタイムラグが出ることも考えられます。いずれにせよ、記憶に新しい平成24年の改正(介護保険制度、介護報酬、診療報酬の改正)や、平成18年の改正(新予防給付、地域密着型サービスの創設)と同様に、注視すべき改正であるといえるでしょう。
平成26年2月に厚生労働省が発表した「介護保険制度の改正案について」では、「消費税増税分に対応した基金の創設」、「医療提供体制の確保」、「地域包括ケアシステムの構築」などを打ち出しています。この中で注目すべきは、やはり地域包括ケアシステムの構築ですが、内容などは後述します。まずは、介護保険制度の改正により、利用者・ケアマネージャーにどのような影響が出るのか考察していきます。
利用者への影響
■利用者負担の増加介護保険の利用者負担は生活保護受給者を除き1割負担です。これが、2割に引き上げられる見通しとなっているため、利用者負担は倍になります。利用者負担が2割となる対象者の選定基準は変更することも考えられますが、普通に厚生年金を受給している場合は対象となることが見込まれており、高齢者の5人に1人程度が対象者になると試算されています。
消費税増税に続き、利用者負担も増えるということになれば、介護サービスを必要としている人が、金銭的な理由でサービスの利用を控えてしまうケースも出てくるかもしれません。月額負担の上限が設定されているので、単純に利用者負担が倍になる訳ではありませんが、一定以上の所得があり、月額負担上限まで介護サービスを利用していない場合は倍になることは事実です。
■介護施設入所基準の厳格化
特別養護老人ホームの入所基準を、現行の要介護1から要介護3以上に限定する方針となっています。やむを得ない場合の例外規定も盛り込むようですが、一般的には、特別養護老人ホームへの入所がさらに敷居の高いものになります。
また、低所得者対策として施設利用者の食費・居住費を補てんするための要件として、単身世帯で預貯金が1000万円以上ある場合は対象外とする案が出されています。改正案では、配偶者が課税されている場合は、たとえ世帯分離をしていても対象外となってしまいますので注意が必要です。
このように、利用者への影響はケアマネージャーにとっても他人事ではありません。金銭的な負担があれば軽減策や代替サービスを検討しなくてはなりません。また、問題の解決のために、様々な社会資源を活用すべく、連携を深めていく必要性も生じてきます。
次のページでは、ケアマネージャー業務にどのような影響があるのか考察します。