もし、契約後に施工業者が倒産したら… どのような救済策があるか要確認
まず、契約締結前に行なったのが施工業者の財務内容の確認です。契約後に倒産されては困りますので、経営の安定性を判定すべく、施工業者の決算内容を調べました。今回、工事を依頼した細田工務店は上場企業ですので、簡単に決算内容を調べることができます。そして、公表資料により同社の過去5年間の経営成績をまとめたのが下表です。
そこで、契約書(工事請負契約約款)を確認すると、「工事依頼者の中止権・解除権」という項目がありました。その一部には以下のような表現が記されており、得てして自分(この場合は施工業者)に都合よく作成された契約書が多いなか、中立性が感じられました。さらに「損害の処理」(後述)についても取り決めが明確になっており、この契約内容であれば万が一の際も心配ないと思い、今回、契約の運びとなりました。
<工事依頼者の中止権・解除権>
『施工業者が強制執行を受け、資金不足による手形・小切手の不渡りを出し、破産・会社更生・会社整理・特別精算の申し立てをし、もしくは受け、または民事再生法の申し立てをするなど、施工業者が工事を続行できないおそれがあると認められるとき、工事依頼者は書面をもって工事の中止を求め、または契約を解除することができる。この場合、工事依頼者は施工業者に損害の賠償を請求することができる』
施工業者に原因があれば、施主が契約の解除・損害賠償請求できるのが本筋
トラブル発生時の「より所」となるのが工事請負契約書。内容の確認をお忘れなく!
請負契約とは、請負人(施工業者)が請け負った仕事を完成させることを約束し、仕事の注文者(工事依頼者)は仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束する契約です。請負契約は仕事の完成および仕事の目的物の引き渡しによって終了しますので、完成・引き渡し前に工事依頼者から契約の解除を要請するには、中途解約によって生じた損害を工事依頼者が施工業者に賠償しなければなりません。
しかし、経営不安などにより施工業者が請け負った工事を完成させられない事情が発生した場合、細田工務店との契約では前段のように、われわれ工事依頼者に工事の中止または契約解除が認められています。損害賠償の請求権を有するのも、施工業者側ではなく工事依頼者側です。
工務店サイドの自己都合によって契約の目的が達成できなくなるわけですから、ペナルティーが工事中止の原因を生んだ施工業者に課されるのは当然のことです。工事依頼者に何ら過失はありませんので、至極、当然な契約条項です。
その他、「損害の処理」についての取り決めもありました。要約すると、「工事依頼者を原因とした工事の遅れや中止、天災などの不可抗力による損害を除き、工事の完成・引き渡しまでに本契約の目的物、工事材料、支給材料、その他施工一般について生じて損害は施工業者の負担とする」という内容です。
私自身、分譲マンションの営業をしていましたので、多くの売買契約書を見てきましたが、その大多数が中立性を欠いた内容でした。その点、細田工務店との請負契約では不安材料がなく、両親も安心して押印することができました。
トラブルが発生した際には“より所”となるのが契約書です。事前にしっかりと目を通しておくことが欠かせません。
次回(第7回)からは、本工事の流れやエピソードについての話題に入ります。