黄色靭帯骨化症とは
脊椎の構成要素である椎弓と椎弓をつなぐ脊髄の後方にある黄色靭帯という繊維性の組織が骨化し、肥厚し硬くなることで、脊髄を圧迫する病気です。この靭帯の色が黄色なので、黄色靭帯と呼ばれてます。脊椎の構造。脊髄の後方に黄色靭帯があります。
胸椎に発生することが多いですが、頚椎、腰椎に発生することもあります。
黄色靭帯骨化症の症状
両手、両足の痛み、しびれ、筋力低下、細かい手の作業が難しくなる症状が出現します。排尿障害などの症状がでることもあります。黄色靭帯骨化症の診断
■単純X線(レントゲン)頚椎単純X線側面像。異常を認めません。
単純X線写真は放射線被爆量も少なく、費用もわずか。その場で撮影も終了し当日説明をうけられるので、整形外科では必ず施行します。
頚椎は7個、体の中央にあります。頭側は頭蓋骨と関節でつながり、足の方向では胸椎とつながっています。横から見ているので四角い形で見えているのが椎体です。椎体の後方に椎弓があります。
黄色靭帯骨化症では、単純X線では異常を認めないことがほとんどです。
■MRI
MRI写真。頚部脊椎が後方から圧迫されています。
MRIは磁気を使用して人体の断面写真を作成する医療用機器です。被爆がないのが最大の特徴です。欠点は費用が約1万円程度と高額な点、狭い部屋に15分 間ほど閉じ込められて、騒音が強いことです。脳外科の術後で体内に金属が残っている人、心臓ペースメーカー装着の人、閉所恐怖症の人などではMRI検査が 無理なため、CTで検査を行います。CTはMRIより費用は5,000円程度と安くなりますが、被爆があります。
このMRIでは第5頚椎第6頚椎間、第6頚椎第7頚椎間で脊髄が後方から圧迫されている所見です。この時点では頚髄症、頚椎ヘルニアなどの可能性が高いと診断されました。
■CT
脊髄はMRIの方が診断能力が高いのですが、骨化した黄色靭帯を診断するにはCTの方が有用です。
頚部CT像。頚椎から胸椎にわたって広範囲に黄色靭帯が骨化していることがわかります。
CTで初めて黄色靭帯骨化症の診断がつきました。病変が頚椎だけでなく胸椎にも及び広範囲であることが診断されました。
黄色靭帯骨化症の治療
一度骨化した黄色靭帯は治癒することはありません。ですので黄色靭帯骨化症の治療は手術治療が基本となります。■神経再生薬
- メチコバール ビタミンB12…障害された神経の修復を促進させる作用を持ちます。1錠21.1円を1日3回服用します。後発薬では5.6円のものが複数あります。4週間の服用で64%の改善率があります。副作用ですが、食欲不振、悪心、嘔吐、下痢、発疹などがあります。
■後方法
神経に対する圧迫を除去するために、骨成分である脊椎の椎弓と呼ばれる部位を切除する手術です。人体の後方からアプローチします。
椎弓切除術。
■前方法
黄色靭帯骨化症では後縦靱帯骨化症を合併することがあります。
その場合前方からのアプローチが必要となります。
■リハビリ
黄色靭帯骨化症の診断、治療は手術を含め長期間となり、それに応じたリハビリが必要です。入院早期からリハビリを開始する必要があります。