そもそも「切り上げ」とは?

一般的に言う「通貨切り上げ」とは、ある通貨と他の通貨との交換レートを、より強いものに変更することです。日本円も昔、切り上げが行われたことがあります。1971年に円ドルの交換レートが、それまでの1ドル=360円から1ドル=308円に変更されました。これが「切り上げ」です。1ドルが360円から308円になることによって、円の価値は以前よりも高まったことになります。

ただし、現在では円ドルレートは変動相場制であり、交換レートは毎日の市場の売買によって決まります。1971年のような切り上げが行われたのは、当時の円ドルは固定相場制だったからです。

今回中国が実行する「切り上げ」とは、単に通貨の価値を高める「切り上げ」ではなく、これまで中国が採用していた固定相場制から変動相場制への移行という意味もあります。

これまでの人民元の相場制

人民元は、第2次大戦後からずっと円やドルのような、完全に自由な変動相場制になったことはありません。最近の人民元の相場制を以下にまとめました。
強くなった中国の経済力を考えると、元はもっと高くても不思議ではない

強くなった中国の経済力を考えると、元はもっと高くても不思議ではない


■97~2005年のドルペッグ制
1997年7月の項目から順に説明します。この年にアジアの経済危機が起こったため、中国は人民元の相場をドルペッグ制にしました。ドルペッグ制とは固定相場制の一種で、自国の通貨と米ドルを一定の交換比率に固定する制度です。この時の交換比率は、1ドル=約8.27元でした。

しかし、中国が経済的に発展していくにつれて人民元切り上げの圧力が各国から高まっていきます。なぜ経済的に発展をすると切り上げ圧力が高まるのかは、後で説明します。

切り上げ圧力が高まったので、ついに中国政府は2005年7月にドルペッグ制をやめ、変動相場制に移行します。これが21世紀最初の「人民元切り上げ」です。この時移行した制度は、「管理変動相場制」と言って、1日のレートの変動幅を一定以内に抑えた完全に自由ではない変動相場制です。ちなみに一定内とは、最初は0.3%以内、2007年5月以降は0.5%以内でした。

■2005~08年の管理変動相場制
変動相場制に移行したので、為替レートが市場の売買に合わせて変動します。2005年に切り上げがあった後、人民元は少しずつ上昇していきました。

■2008年~ドルペッグ制
2007年夏以降にサブプライム問題によって世界経済が危うくなってきたので、中国政府は2008年7月に再びドルペッグ制に戻しました。この時はあまり大々的に発表せず、ひそかに制度を変更しています。この時から2010年まで続く為替レートは、1ドル=約6.83元です。

■2010年~管理変動相場制?
2010年になって、また各国から人民元の切り上げ、変動相場制への移行圧力が高まっています。すでに「今年中の実行は必至」とも言われていますが、なぜ主要国(主にアメリカ)は切り上げを求めているのでしょうか?