電撃症・雷撃症とは
夏に発生しやすい雷、電気による体の影響を考えてみましょう
雷撃症は、高圧の電気である雷によって体内に電気が流れることで起きる症状のことで、即死か軽症かに二分されます。
電撃症の原因
成人の場合は家庭のコンセントで起こることが多いですが、速やかに手を放すことができるため軽い熱傷で済む場合が多いです。子供の場合は、知らずに感電しますので、特に危険です。労務上、電撃症になりやすい鉄塔などの高所で作業している時にも起こることがあります。漏電に気づかない場合など、事故が原因であることがほとんどです。
電撃症の症状
コンセントなどでの事故によって手から電気が侵入した場合、手首・肘・腋窩(わきの下)などを電気が通過します。また、接地部の足から地面に電気は流れていきますので、四肢にも損傷が起こります。つまり、電気が流れた部分の内部に熱傷が起こっています。電流の身体への流入部と流出部では、皮膚が無くなりただれてしまい(潰瘍)、それを「電流斑」といいます。この電流斑があることで、電気が流れたかどうかの診断の一助となります。皮膚表面の損傷が軽くても、神経・筋肉・腱・血管などが損傷され、下記のような症状が出る可能性があります。
- 神経の損傷:痛み、麻痺や知覚障害
- 筋肉の損傷:痛み、腫れ、筋肉の成分が腎臓に負担を起こす腎不全
- 腱の損傷:痛み、麻痺
- 血管の損傷:出血など
高所での作業による電撃症では、転落による骨折・内臓損傷・脊髄損傷などが起こります。
雷撃症の場合は、心停止、内臓損傷による即死か軽症です。体の表面を電気が通るので、皮膚に雷撃による樹枝状の熱傷がみられ、「雷紋」と言います。雷紋があって、心停止をしていなければ、軽症かもしれません。しかし、内臓の損傷の評価をするために、軽症であっても、48時間程度は経過観察入院が望ましいと言われています。
電撃症の治療
呼吸停止、心停止の場合は、ただちに、救命処置として、人工呼吸と心臓マッサージを行います。野外の場合は難しいかもしれませんが、電気によって不整脈が生じている場合は、AED(自動体外式除細胞器)を使用します。このAEDは心室細動と言う不整脈に対して、電気ショックを与えて、心臓のリズムを整える機械ですから、心停止の場合は作動しません。高所で作業している場合に起こる電撃症では、電流・電圧が高いこと、転落などの外傷も考えられることから、高度救急救命センターでの搬送が望ましいことがあります。
電撃症は、電気による熱傷ですから、輸液を行い、筋肉の成分が腎臓に詰まらないようにします。尿が茶褐色になっている場合は、人工透析を行います。感染症の予防のために抗菌薬を使用し、局所はできるだけ解放にします。電気で損傷された組織は手術で、できるだけ取り除きます。筋肉が腫れている時には筋肉を覆う膜である筋膜を切開して、腫れを抑えます。さらに筋肉の破壊が広範囲の時には、切断の可能性もあります。血管からの出血は、圧迫して止血します。止血しない場合は、動脈をくくって、出血を止めることもあります。
次のページで、落雷の予防について説明します。