長さん、長い間お疲れさまでした。そして、ありがとうございました。
84歳 現役のデザイナー 長大作
デザイナー:長大作さん(ちょう・だいさく=家具デザイナー)が老衰のため5月1日、92歳の生涯を閉じた。5月5日に近親者のみで葬儀を終えたとのこと。長さんは、旧満州生まれ。昭和22年に坂倉準三建築研究所に入社し、藤山愛一郎邸や八代目松本幸四郎邸などの設計を担当。独立後も和洋の文化を融合させた家具のデザインを数多く手がけた。代表作に「低座椅子」、「中座椅子」、「はっぱチェア」などロングセラーの椅子がある。
連休明けに訃報を受け「えっ!」と言葉を失った、と同時に長さんのあのお優しい笑顔が浮かんだ。
数々の仕事ぶりは、「84歳 現役のデザイナー 長大作」(株 ラトルズ)で紹介され、80代でもなお現役にこだわり続けたデザイナーとして当時話題となった。
長年日本のデザイン界に数々の功績を残され、様々な展示会やイベントでお会いする機会もあった。とにかく、ほとんどの展示会(デザイン・家具関連はもちろん)で、長さんの元気な姿を拝見しないことはないくらい展示会でお会いした。
【石川 尚のプレスレポート#11 IFFI2002】では、長さんが会場を見学中お話させて頂いた様子を記している。
個人的には(公社)日本インテリアデザイナー協会50周年記念の年、僕が編集長を担当した『日本デザイン50年(エイ出版社)』で代表作:低座椅子に関するインタビュー、そして手書きの図面やスケッチ等の沢山のオリジナル資料を提供頂いた。
また、2006年、世田谷美術館で開催された「世田谷美術館で現役クリエイター3人の展覧会『クリエイターズ』。
会場では長さんの作品が所狭しと展示され、とても内容の濃い展示会だった。
当時インタビューで印象に残っている長さんの言葉がある。
「どういう材料を使うのか? その材料をどう使うことが素直なデザインなのか?
とにかく、素直にやろう!という気持ちが強いですね。
どんな場合でも座り心地の良さを考えている。 時々、若い人の作品展を見に行くのですが、格好ばかりの人が多いですね。だから、残らない、右から左へと消えていく。アドバイスをしても、年寄りが言っていることと聞く耳をもっていない・・・ダメですね。 原形がしっかりしているからデザインが生きてくる。ちゃんとしたモノをきちんとつくれば時間が経過しても復刻版として蘇る。そこがデザインの興味深いところです。」
ごく当然のことだが、長大作さんだからこそ説得力のある言葉だ。 そして『指の先にも目がある』と言って指先で椅子やテーブルのディテール(細部)を触っている長さんを思い出す。
この様子は、【保存版】クリエイターズ展で。
長さんはいつも若い世代に気軽に声をかけていらっしゃった。