漫画トリオを引き継ぐ形で
漫画トリオの活躍は解散する1968年まで続きましたが、彼らに対抗できるトリオ漫才は現れませんでした。しかし、解散した漫画トリオの穴を埋めるかのように登場したのが“レツゴー三匹”でした。リーダーは三波春夫……ではなくレツゴー正児。じゅんはボケ役でアイドル的人気も獲得し、歌のうまさを発揮した長作ともに、正統派のトリオ漫才を引き継ぎました。漫才というのはネタの面白さはもちろんですが、演者の間合いが重要になってきます。2人で合わせるのも大変なところを、3人でやるのだから至難の業です。レッツゴー三匹には喋り中心のネタもあれば、3人で動きまわり、暴れまわるネタもありました。しかも、最近は5、6分でまとめたものが中心ですが、70年代の漫才は10分から15分とかなりの超大作。定期的に新しいものを作っていくことは、今よりも大変な作業だったと思われます。
自由奔放にも見える巧みな演技
3人の中でボケ役を担当していたレツゴーじゅんは、ネタの進行を担当していた正児、長作に対して、自由気ままにフザケまわっているかのように見えました。もちろん、そんな筈はないんですが(笑)。天性の明るさと演技の巧みさが混ざり合ったことで生まれた、愛すべきキャラクターでした。レツゴー三匹自体は最後まで解散という宣言はしなかったものの、昭和から平成に変わった頃から、3人で漫才をする機会はめっきりと減っていました。それに代わって増えてきたテレビや舞台での俳優業では、逢坂じゅんという名前でコミカルなものからシリアスなものまで、達者な演技を披露してきました。晩年に高視聴率ドラマ2本へ出演したことで、その姿は多くの人々の記憶に焼き付けられたと信じています。
ただ、活動休止期間が長かったことで、後継のトリオ漫才が育っていないことは残念です。現在活躍中のトリオ漫才というと、我が家のローテーション漫才と安田大サーカスくらいしか思い浮かびません。2組とも好きなグループではあるものの、正統派のトリオ漫才というにはちょっと(苦笑)。
トリオコントが盛り上がっているだけに、ニッチを狙って漫才をやってみようという3人組に出てきて欲しいものです。