説明まで考えておけば名づけは万全
説明しにくい字というのがある
A:「彗星の彗の字に心を加える」と言うのがもっともわかりやすい説明です。じつは昭和61年にハレー彗星が大接近したとき、記念に彗の字を名前に使いたいと思った人も多かったのですが、その時は彗の字が名前に使えなかったため、慧の字が代用されて使われたといういきさつがあります。後に平成2年に彗の字も名前に使えるようになりましたが、その時はもうハレー彗星は遠くへ去った後でしたので、名づけには流行しませんでした。彗の字は古くはホウキと手を描いた絵で、心をつけた慧の字はホウキで掃くような細かい心の動きを意味します。
説明のしにくい字は多い
社会生活では、電話で名前を伝えなければならないことがよくあります。ご質問の慧の字はそれほど説明に困る字ではありませんが、たとえば次のような字は、説明をしたつもりでも相手の人が違う字を書いてしまっていることがあります。庸(ヨウ)・繭(ケン・まゆ)・哉(サイ・や)・耶(ヤ)・弥(ミ)・嘉(カ)・煕(キ)・恭(キョウ)・菫(キン・すみれ)・皐(コウ)・紘(コウ)・捷(ショウ)・峻(シュン)・竣(シュン)・淳(ジュン)・惇(ジュン)・暢(チョウ)・肇(チョウ・はじめ)・敦(トン)・鞠(キク・まり)・瑶(ヨウ)・燎(リョウ)・凌(リョウ)・陵(リョウ)・稜(リョウ)・遼(リョウ)・崚(リョウ)・黎(レイ)などの字で、みな口頭で説明するには苦労する字です。
このうち繭、菫、鞠、黎などは、おぼろげに頭に浮かんでも正確に書けない、という方も多いのです。ただし説明しにくい字でも、もし有名人が居てくれたなら、たとえば「哉」は木村拓哉さん、「遼」の字は石川遼さんといった氏名を出せば、大抵はすぐにわかってもらえます。
似た字があるために間違われる例
漢字の中には、説明が難しい上に、似た字があって余計に間違われやすいものもあります。次のような字です。遥(ヨウ・はるか)と遙(ヨウ・はるか)=全く同じ字で、遙が旧字体、遥が新字体です。新字体で名前をつけても、旧字体しか知らない人もいるためよく書き間違いをされます。
亨(キョウ・コウ・あきら・すすむ・とおる)と享(キョウ・あきら・すすむ)=古代は大きな建物を描いた同じ絵で、後に二つの別の字に変化したものです。
凜(リン)と凛(リン)=同じ字の書き方が違うだけですが、凜のほうが原初の成り立ちを伝えています。
修(シュウ・おさむ)と脩(シュウ・おさむ)=実際は脩の字は日常使われず、名前にも滅多に使われませんので、修の字を使えば混乱が起きることはありません。
昂(コウ・たか・たかし)と昴(ボウ・すばる)=全く意味の違う別の字ですが、見間違いはよく起きます。
譲(ジョウ・ゆずる)と穣(ジョウ・みのる・ゆたか)=別の字だということは多くの人が知っていますが、見間違えをしやすい字です。
燿(ヨウ・あきら)と耀(ヨウ・あきら)=どちらも輝くことですが、火と光がちがい、別の字です。ただ電気の無かった時代は、火が照らすことと、光が照らすことは同じことだったのでしょう。名前に使われることは少ないですが、意味も読み方も同じで、見間違いもしやすい字です。