「ワンルーム」「専業主婦」は、もはや幻想
藤原和博さん 撮影/(C)IHA
――少ない収入でも豊かに生きるには、どんな戦略が必要でしょうか?
藤原和博さん 最初にやるべきことは、“ワンルームマンション”と“専業主婦”というこれまでの代表的な価値観を捨てることです。全て揃っている住居に一人で住むという「ワンルームマンション」の感覚、そして夫を見つけて働かずに生きるという「専業主婦」感覚は、もはや幻想に過ぎない。そう考えたほうが幸せになれます。
今、若い女性の間で専業主婦志向が高まっているけれど、それは逆に、“もうそんなことはできない”と分かっているからでしょう。ですから、結婚して家庭を作るとか、子孫を残すといったことは別の問題と割り切って、まずは“生存のために”誰かと住まいを共有し、インカムを倍にしてシェアする。結婚しなくても“リビングトゥギャザー”で“ダブルインカム”を目指すことです。
――日本でも最近、シェアハウスが普及しだしました。
藤原 ようやくそういう流れが出来てきましたよね。誰かと住まいを一緒にするということは、固定費を下げるだけでなく、家の中をどう使うのか、友達は連れてきていいのかなど、あらゆることを通じて対外交渉能力を磨いたり、人間関係の有り様を学ぶことにもつながります。友人同士で住むよりも、まったく知らない人同士が一緒に住むほうが、ルールが決めやすいという利点もある。
ヨーロッパでは、ネットなどでルームメイトを募集して“リビングトゥギャザー”するのが一般的です。イタリア以外のヨーロッパの国々では、18歳になると皆、独立します。とはいえ、一流大学を出てもすぐに良い就職ができてお金を稼げるわけではない。自分でキャリアを作り上げてステップアップしないといけない社会ですから、若いうちはたいてい誰かと住まいを共有して、固定費を節約するのです。
もちろん、ファミリー向けの物件にルームメイトを探して住むのもひとつの手ですね。リクルートに勤めている知人は、会社に近い3LDKのマンションを3人で借りて住んでいます。どんな時代でも生き抜いていけるのは、状況に応じて柔軟な頭を持てる人だと思います。
★第2回目では、サバイバルするための消費の方法について教えていただきます
教えてくれたのは……
藤原和博(ふじはら かずひろ)さん
教育改革実践家/杉並区立和田中学校・元校長/元リクルート社フェロー
1955年東京生まれ。78年東京大学経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任後、93年よりヨーロッパ駐在、96年同社フェローとなる。2003年より5年間、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校校長を務める。08年~11年、橋下大阪府知事の特別顧問、14年~佐賀県武雄市の教育政策特別顧問に。キャリア教育の本質を問う[よのなか]科が話題に。詳しいプロフィールはホームページにて「よのなかnet」http://yononaka.net
『人生の教科書[よのなかのルール]』『人生の教科書[人間関係]』(ちくま文庫)など人生の教科書シリーズ、ビジネス系では『リクルートという奇跡』、情報編集力の本質を和田中での改革ドキュメントとともに解説した『つなげる力』(ともに文春文庫)、『35歳の教科書―今から始める戦略的人生計画』『藤原和博の必ず食える1%の人になる方法』など著書多数。最新刊はコミュニケーションと対人関係が苦手な日本人のための手引き『もう、その話し方では通じません』(中経出版)。
取材・文/西尾英子 パネルデザイン/引間良基