投資家が踏まえておきたい2014年のリスク
世界を大局的に見れば、リーマンショックからの回復を超えて、次の成長ステージに突入しています。しかし、成長は一直線に進むはずもなく、いくつもの誤算、衝突、破壊を繰り返しながら、ジグザグに進行していきます。ですから、経済の発展、株価の成長を信じつつも、想定外の下落も覚悟しておかなければ、投資はできません。そういう意味で、いま起こりえる3つのリスクを取り上げてみました。
第1にウクライナ、第2に中国、第3に中近東です。
混迷を深めるウクライナの出口は?
前の大統領が国外追放されて、新しい国づくりが始まる最中に、ロシア系と非ロシア住民の間で争いが起こっています。そこに乗じたロシアはクリミア半島を併合してしまいました。クリミア半島ははもともとソ連の国土でしたから、クリミア併合だけで済めばまだ良かったのですが、ロシア系住民の独立願望はウクライナ東部に燃え広がり、それをロシアが後方支援をしています。アメリカもEUも政府首脳は、ロシアを非難して、暫定政権による新政権の民主的な発足を後押ししています。しかし、ウクライナ国民の中に欧米の介入を不快に思っている人がいることも事実。一方のロシアのプーチン大統領は、ロシア系住民の要望に応えるという大義名分のもとで、領土拡張の野心を隠していません。
ウクライナ問題を複雑にしているのは、ロシアと欧州の経済の相互依存関係です。ドイツのエネルギーは、ロシアからのガスや原油で4割を占めていますし、イギリスの金融街でもロシア富裕層の資産が逃避することを怖れています。プーチンを自粛させるような強硬な制裁を取れないことが、事態を流動的にしています。
この政変で、ロシアの株価は2013年のピーク時から11%も下げました。この変化は、他の新興国株式市場にも影響を与えかねません。次は、5月25日の暫定政府による大統領選挙が成功するかです。もし、混乱に拍車がかかるようだと、ロシアのみならず欧州全体の株式市場に悪い影響を及ぼすことが懸念されます。
中国のバブル崩壊はどのくらい大きいのか?
中国の経済成長がピークを過ぎて減速していることは、ご存知でしょう。これをバブル崩壊と呼ぶのは大げさかと思いますが、減速の落ち着く先がどの程度なのかは、専門家でも意見の分かれるところです。悲観論からいえば、中国のバブルはすでに破裂してしまっているし、不動産や建設の不況が厳しくなると指摘するのは野村証券です。その調査報告によると、住宅の供給過剰と不動産業者向け融資資金の不足が相まって、住宅市場の崩れを引き起こし、中国の国内総生産(GDP)の伸びが6%を下回ることもありうるという。最悪の場合には、中国発金融危機の再燃も有りです。
そこまで深刻に受け止めない楽観論では、GDP成長率予測を2014年について7.5%から7.3%へ、15年は7%から6.8%という程度の影響と受け止める欧州金融機関もあります。
いずれにしても、世界の大工場として、そして大消費地として、中国経済は世界経済に大きなインパクトを持っています。中国の経済停滞が本格的なものになれば、需要の減退、資源価格の下落、紛争の頻発など、さまざまなダメージを与えながら、世界の株式市場をむしばんでいくことが心配されます。中国政府のデータが大本営発表的で信頼性が薄いことも、不安を打ち消せない理由の一つです。しばらく、モヤモヤした状況が続くことでしょう。
中近東で静かに進行する対立の行方は?
日本から遠くて見えにくいのが中東ですが、再び世界の火薬庫とならないか心配です。というのも、イスラエルとパレスチナ自治区の和平交渉が期限切れを迎えて、和平交渉を再開できないでいます。さらに、イスラエルとアラブ諸国との対立、シリア内戦も終息のきざしがありません。アメリカの仲介力も低下しているせいもあり、問題は複雑です。
最近では、ウクライナを巡るロシアと欧米先進国との対立が、中東情勢に暗い影を落としていると見る人もいます。ウクライナ国境におけるロシアの軍事行動が、中国やイスラエルなどが、ロシアの併合を見て、自国の領土問題を軍事的に解決することを正当化しかねないからです。
もし、中東で戦争でも起これば、世界は再び”リスクオフ”の時代にいっぺんに逆戻りすることでしょう。
リスクを知って投資をする
以上、世界の金融市場に顕在化する3つのリスクをご紹介しました。誤解して欲しくないのは、今がとてつもなく危険な時期であるワケではありません。この程度のリスクは、いつも抱えながら人類は成長を遂げてきました。そのリスクに立ち向かえる人が投資をすればいいので、報われればお金は増えます。
ただ、何が起こりえるかだけは、知っておいてください。
そして、こうしたリスクが最悪の結果につながったときに、金融商品の暴落が起こります。次回の記事では、暴落が起きたらどうしたらよいかを解説しましょう。