――ではこれまで関わって来られた作品の中で、ターニングポイントや特に印象に残っている役柄と言えば何でしょう。
浦井
えーっと……全部です(笑)。全部なんですが、例えば新国立劇場の『ヘンリー六世』では演出の鵜山(仁)さんと一から……台詞の一行目から深く話し合って作品を作り、演劇界の錚々たるメンバーと共演させて頂きましたし、ずっと憧れだった劇団☆新感線にはシャルルというちょっとぶっ飛んだ役で参加させて頂きました。三谷(幸喜)さん、蜷川(幸雄)さんの舞台も……うーん、そうですね……どれも本当に印象深いです……決められない! 後は今年再演させて頂くんですが、初主演作となった『アルジャーノンに花束を』にも強い思いがありますね。
――井上芳雄さん、山崎育三郎さんと組んだユニット「StarS」では舞台を中心に活動するメンバーで武道館を満員にし、CDセールスでも画期的な数字を叩き出しました。
浦井
ありがたいですよね。武道館では1万人以上のお客様から沢山の愛を頂いたと思いますし、改めてチケット1枚に込められた重みを確認させて頂きました。6月の『オリンピックコンサート2014』では3人揃って歌います。また今年の岩谷時子賞でStarSが奨励賞を頂きましたので、支えて下さったファンの皆様やスタッフさんの想いと共に授賞式に出席させて頂ければと思っています。
今、この作品を日本で上演する意味
熱く濃い人間ドラマを客席で体感して欲しい
――では最後にもう1度『ビッグ・フェラー』のお話を。台本を読ませて頂いて、これは政治色を前面に押し出した作品ではなく、そこに生きる人間を描いたドラマだと思いました。サスペンス要素も盛り込まれていて、スリリングな展開も楽しめますよね。
浦井
はい! 確かに「IRA」のメンバー達の30年間と言う事で”難しいかも……”とちょっと不安に感じていらっしゃる方もいるかと思うんですが、その心配はひとまず置いて劇場に足を運んで頂ければ嬉しいです。『ビッグ・フェラー』は紛れもない人間ドラマですし、この作品を今の日本で上演する意味についてもカンパニーの思いは一致しています。過去の難しい政治のお話ではなく、今そこに暮らす人間達の日常や非日常をひょいっと覗き見る様な感覚でご覧頂ければ幸いです。”勉強”は役者がするものですから、お客様は肩肘張らずに客席に座って目の前で起こる熱くて濃密なドラマを楽しんで下さい!
2014年、本作『ビッグ・フェラー』を含め、5本の舞台に出演予定の浦井健治さん。
ミュージカルとストレートプレイの現場を自在に行き来しながら、アーティスト活動やテレビ出演もこなす稀有な存在の俳優さんだと思います。
佳境に入ったお稽古場でのインタビューでは、付箋が沢山付けられ、演出家や共演者の言葉が書き足された厚い台本に時に目を落としながら、丁寧に言葉を選んで語る姿がとても印象的でした。その真摯な姿勢が沢山のスタッフや共演者に愛される所以なのだろうなあ、と。
『ビッグ・フェラー』最終場、浦井さん演じるマイケルが登場するシーンには作者 リチャード・ビーンのある”メッセージ”が込められています。そんなポイントにも注目しつつ、男たちの熱くて濃い30年のドラマを是非客席で体感して下さい。
ビッグ・フェラー (撮影:石黒淳二)
2014年5月20日(火)~2014年6月8日(日) 世田谷パブリックシアター
作 リチャード・ビーン 翻訳 小田島恒志 演出 森新太郎
内野聖陽 / 浦井健治 / 明星真由美 町田マリー 黒田大輔 小林勝也 / 成河
*兵庫・新潟・豊橋・大津公演あり
→ 公式HP
◆ 浦井健治さん 今後の出演舞台
2014年8月 『タイトル・オブ・ショウ』 → 公式HP
2014年9~10月 『アルジャーノンに花束を』 → 公式HP