日本人なら、日本食を食べている?
一汁三菜の献立を目安にすると、幅広い食品をとりやすくなります。
ガイドの食と健康における、これまでの学びや取材を通して、これだけは問題ないだろうと言えることは「できるだけ幅広い食品を食べること」そして「食べすぎないこと」ではないかと思っています。
2014年3月に東北大学大学院農学研究科(都築毅准教授らのグループ)の研究で、「現代の日本食に比べて1975 年頃の日本食は長寿に有効であること、加えて学習記憶能の維持にも有効であること」という報告(マウスレベル)がありました。
世界の長寿国として毎年トップレベルにある日本は、その食事が健康の一つの要因として注目されています。例えば緑茶や魚、海藻、味噌や納豆などの発酵食品といった単一の食品の有効性が研究されたり、油脂類が少なく出汁の旨味を効かせて低カロリーに仕上がる食べ方や、「日本型食生活」と呼ばれる米食を中心に幅広い食品を取り合わせる献立も評価されています。
しかし、そういったものを現代の日本人が食べているかというと、必ずしもそうとは言い切れません。これまでも記事(※参考)などにまとめてきましたが、知識として知っていても、なかなか実践できないという人もいるようです。
※参考
和食派が増加! 一方でごはん消費量減少の不思議
現代の食卓は「0.87汁2.37菜」?
国をあげての健康づくりの取り組みは続いていますが、国民健康栄養調査などを見ても、糖尿病など生活習慣病の患者数が大きく低減しているという成果は見られません。運動不足等の習慣の問題もありますが、食習慣も一つの要因と見られます。欧米型の食事による油脂の摂りすぎや野菜不足、あるいは高齢者や若い女性の低栄養なども問題になっています。
同グループも、現代の欧米化した日本食が健康にとって有益性が本当に高いのかを疑問として持っていました。それを踏まえて今回は、日本食の長期的摂取が「寿命」にどう影響するのか、マウスを用いて検討するとともに、最も健康有益性の高い日本食を明らかにすることを試みたものでした。
1975年頃の食事は、長寿・学習記憶能力の面でも有効
同グループの研究で注目すべきところは、単独の食品ではなく、様々な食品を組み合わせてとった食事(献立)の内容で比較しているところだと思います。その方法は、管理栄養士の指導の下、日本国民・栄養調査に基づいて、 2005 年(現代)、1990 年、1975 年、1960 年、それぞれ 1 週間 21 食分の日本食の献立を再現し調理したものを粉末化し、マウスの通常飼育食に混合して(30%日本食混合物)、老化促進モデルであるマウスに自由に食べさせて寿命まで飼育しました。
その結果、1975年と1990年の日本食を摂取したマウスの平均寿命は、2005年の日本食を摂取したマウスと比較して長寿でした。1975 年と 1990 年の日本食を摂取したマウスは、老化の進行が遅延していることが確認されました。特に1975 年の日本食を摂取したマウスは、学習記憶能が良好な成績であり、加えてがんの発生率が最も低いことが認められました。
以上の結果から、1975 年頃の日本食は老化を遅延し、長寿に有効であることが示されました。