親が子どもに嘘をつくことで与える影響とは
親が子どもに嘘をつく
■グループ分け
この実験には、3~7歳の子ども達186人が参加しました。まず、実験の初期設定として、子ども達を次の2つのグループに分けました。
- グループ1:実験者が子ども達に「隣の部屋に甘いお菓子が沢山置いてあるよ」と言い、その後「実はお菓子は置いてあると言ったのは嘘だった」と告白した
- グループ2:お菓子の話題には何も触れず、そのまま、次のステップである室内ゲームへと進んだ
■実験の流れ
その後、子ども達は室内でゲームを行いました。そのゲームとは、人気キャラクターの声当てクイズでした。セサミストリートのエルモ、くまのプーさん……とゲームは順調に進み、「次は何?」と子ども達が耳を澄ませて待っていると、そこに子ども達には馴染みのないクラシック音楽が流れ出しました。実験者は子ども達に、「申し訳ない。隣の部屋に行ってこの音楽を消してくる。私が戻るまで、カードに書いてある答えをのぞいてはいけないよ」と伝え、すぐに部屋を出て行きました。
■実験の意図
「答えをのぞいてはいけない」と言われた子ども達が、
- 実験者が退出中に、どの程度、カードをめくって、のぞき見をしてしまうか?
- また、実験者が戻った後、のぞき見したことを正直に話すか、それとも隠し通すか?
■実験結果
小学生(5~7歳)の子ども達
- 答えをのぞき見した割合は、グループ2の子(実験者に嘘をつかれていない)が60%、グループ1の子(実験者に嘘をつかれた)が80%だった
- グループ1の子は、答えをのぞき、そのことを隠し通す(つまり嘘をつく)傾向がより強かった
未就学児(3~4歳)の子ども達
小学生グループとは対照的に、3~4歳の子ども達は、実験者の嘘の有無に影響されにくいことが分かりました。つまり、嘘をつかれたか、そうでないかで、のぞき見やその後の嘘の割合に差が出なかったのです。ということは、4~5歳くらいが、「嘘をついた人には嘘をついてもいい」と解釈を始める時期とも取れます。
*出典:Developmental Science (2014) 「Follow the liar: the effects of adult lies on children's honesty」より
子どもにとって嘘に悪気のある、なしの判断はつきにくい
子どもに伝わってしまうのなら悪気がなくても嘘は嘘
また未就学児は嘘の有無には影響されにくいとの結果を前ページで書きましたが、だからと言って、親が嘘をついてOKということではありません。子どもの成長は昨日が今日へ、今日が明日へ、明日が未来へ、とつながっていくもの。小さな心に落としてしまった種が後々芽を出すこともあるのでやはり避けるべきです。
裏メッセージも嘘になることが!
裏メッセージとは、簡単に言えば、ママの言葉の裏にあるメッセージのことで、子どもがママの言葉から”実際に”何を学んだか、を指します。裏メッセージには、質の良いものと悪いものがあり、質の良いものは、ママが伝えたかったこと=子どもが実際に学んだこと、のようにママの言葉がそのまま子どもに伝わります。一方、質の悪いものは逆! ママの言葉とは違うものが子どもに伝わります。
例えば、
「今度○○したら、もううちの子じゃないよ!」
「ここに散らかっているおもちゃ、全部捨てちゃうからね」
どちらも実行に移せない、非現実的な内容をママは発しています。子どもはママのこのような発言をまっすぐそのまま捉えてしまうために、このような発言が度重なると、
「ママは言っていることと、やっていることが違う」
「ママが言うことは、どうせ本当ではない」
と取るようになります。ママはそんなつもりはなくても、子どもにとっては「嘘」と思えるメッセージを発信してしまっているのです。
嘘とは自覚があると「嘘」になりますが、気づかなければそれまでです。裏メッセージは知らず知らずに発信しているものなので余計に注意が必要です。
まずは、ママから「自分の言葉に正直に」を心がけると、真似の達人の子ども達は、言ったことをきちんとやる正直な子に育ってくれます。
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