住宅や土地などの売買契約をするときには、売主業者と直接やり取りをする場合を除いて、たいていは売主側の仲介業者と買主側の仲介業者の2社、もしくは売主と買主の双方の間に立つ1社が業務にあたります。
ところが、売主側の仲介業者と買主側の仲介業者の間に別の仲介業者が存在することがあり、これを「あんこ」もしくは「あんこ業者」などといいます。たとえば、売主から売却の依頼を受けたのが「オール不動産」、買主を見つけたのが「アバウトホーム」で、その間に「平野住宅」が存在すれば、平野住宅が「あんこ」ということです。
中間業者が不動産取引の表舞台に出ず中に隠れている様子を、まんじゅうの「あんこ」に見立てたものだとされていますが、古くから使われている業界用語であり、まだ洋菓子が一般的ではなかった時代に使われるようになったのでしょう。
インターネットが発達する以前には、物件情報のやり取りが電話やFAXを中心に行なわれ、業界内での共有も進んでいなかったため、売主から売却の依頼を受けた業者が付き合いのある別の業者へ情報を流し、さらにその業者が別の業者へ情報を流すなどして契約をまとめることも少なくありませんでした。
そのため、ごく普通の住宅や土地の売買契約でありながら、あんこ業者が5~6社というようなケースもありました。業界内の人的なネットワークを生かし、あんこ専門業者として主にFAXによる情報のやり取りだけで稼いでいる会社もあったようです。
しかし、現在では物件情報の共有化が進んだほか、たとえばマンション用地のような特殊な案件でも、デベロッパーが数多くの仲介業者から直接、情報を仕入れることが多くなっています。
あんこ業者が介在する契約はかなり減っているでしょうが、情報が広く公開されることを売主が望まなかったような物件などでは、依然としてあんこ業者が関与することもあるでしょう。
契約の場になって初めてその存在を知らされることもあるでしょうが、もし、購入する物件の契約にあんこ業者がいたとしても、そのこと自体はとくに問題でなく、あんこの存在によって仲介手数料の負担額が増えることもありません。
売主と買主はそれぞれ自分が依頼した仲介業者へ上限額以内の手数料を支払い、あんこ業者はその中から「分け前」を受け取ることになるのです。
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