開幕まで2か月をきったW杯。各国の最新情報を、グループリーグごとにお伝えする。
ブラジルW杯の開幕で2か月をきった。日本代表選手のプレーは気になるが、対戦相手の主力が活躍しているのかどうかもサッカーファンであれば見逃せない。優勝候補は順調にブラジルヘ乗り込もうとしているのか? 各国の最新情報を、W杯のグループリーグごとにお伝えしよう。
グループAはブラジル、クロアチアが有力か?
ブラジル、クロアチアを筆頭に強豪国がひしめくグループA。各国リーグにおける主力選手のプレーぶりやケガ人などを考慮したうえで順位を予想すれば、グループAは現状で以下のようになるだろう。1位)ブラジル
2位)クロアチア
3位)カメルーン
4位)メキシコ
以下、各国の状況を詳しく解説していく。
<大本命のブラジル、元Jリーガーが得点を量産中>
グループAでクロアチア、メキシコ、カメルーンと対戦するブラジルのルイス・フェリペ・スコラーリ監督(65歳)は、スペインから届いたニュースに肝を冷やしたに違いない。4月16日、エースのネイマール(22歳)が左足甲を痛めたのだ。
しかし、離脱期間は4週間とアナウンスされた。6月12日のW杯開幕戦には間に合う見込みで、指揮官と母国のサポーターはひとまず安堵している。
ブラジルで好調さを印象づけるのは、ストライカーのフッキだ。かつてJリーグの複数クラブを渡り歩き、現在はロシアプレミアリーグの強豪ゼニトでプレーする彼は、得点ランキング首位の16ゴールをマークしている。攻撃の軸として1トップを務めるフレッジ(30歳)も、所属するフルミネンセで好調を維持する。ブラジルの攻撃陣に不安はない。
<クロアチアの命運を左右するスーパーサブの仕上がり>
そのブラジルと開幕戦で対戦するクロアチアも、レギュラークラスが精力的にアピールしている。最終ライン中央でコンビを組むデヤン・ロブレン(24歳)とヴェドラン・チョルルカ(28歳)は、サウサンプトン(イングランド)とロコモティフ・モスクワ(ロシア)で定位置をつかんでいる。
攻撃陣ではマリオ・マンジュキッチ(28歳)が、W杯へ向けて勢いを増している。ドイツ・ブンデスリーガで優勝を決めたバイエルン・ミュンヘンで、リーグトップタイの18ゴールをマークしているのだ。サイドアタックを担うベテランのイビチャ・オリッチ(34歳)も、ここまで13得点を記録して健在ぶりを示している。
クロアチアではもうひとり、エドゥアルド・ダ・シルバ(31歳)の名前を覚えておきたい。ウクライナの強豪シャフタール・ドネツクでプレーする左利きのストライカーは、リオデジャネイロ出身のクロアチア人だ。生まれ故郷で開催されるW杯に、どれほどの熱量で望むのは想像に難くない。途中出場で流れを変えるスーパーサブとしての起用が濃厚なエドゥアルドも、クロアチアの命運を左右する。
<視界良好なカメルーン&一抹の不安が残るメキシコ>
日本代表の内田篤人と同じシャルケ(ドイツ)でプレーするDFジョエル・マティプ(22歳)、経験豊富なキャプテンのFWサミュエル・エトー(33歳)らが、ブラジルヘ向けて牙を研いでいる。W杯出場が絶望視される主力選手は、これまでのところ出ていない。
クロアチア、カメルーンとグループ2位を争うメキシコは、主砲ハビエル・エルナンデス(25歳)のコンディションに一抹の不安が残る。所属するマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)で、プレー機会が限定されているのだ。チームメイトの日本代表MF香川真司が出場時間を伸ばしているのに対し、このメキシコ代表のエースは依然として後半途中からの出場が定番となっている。
途中出場でもピッチに立っていれば、ゲーム感覚が鈍ることはない。問題はスタミナだ。ブラジル、クロアチア、カメルーンという強豪相手のゲームは、すべてがハイテンションな攻防となる。心身ともに疲労度は大きい。所属クラブでゲームをこなしていないと、試合終了までスタミナが持たない危惧があるのだ。
また、1月にドイツ・ブンデスリーガのレバークーゼンへ移籍したアンドレス・グアルダード(27歳)も、新天地でポジションをつかみ切れていない。左サイドバックの彼がコンディションを落としてしまうと、メキシコの不安はさらに増す。
スペインとオランダの2強に、他国はどこまで迫れるか?
グループBの現時点での見どころは、スペインとオランダの2強に、チリがどこまで抵抗できるかだ。全員がハードワークするチリは侮れないものの、最終結果は以下のようになるはずだ。1位)スペイン
2位)オランダ
3位)チリ
4位)オーストラリア
<優勝候補スペイン、オランダを襲った主力の離脱>
4年前の南アフリカW杯で優勝を争ったスペインとオランダが、グループBでいきなり激突する。チリとオーストラリアを加えたサバイバルは欧州2か国の勝ち抜けが濃厚だが、両国は懸念材料を抱えている。
前回王者のスペインは、アルバロ・アルベロア(31歳)を欠くことになりそうだ。レアル・マドリードに在籍する彼は、不動の右サイドバックとして“無敵艦隊”を支えてきた。しかし、3月上旬に右膝の負傷が明らかとなり、全治2か月と診断されている。
順調にいけば5月上旬にピッチへ戻ることができ、レアル・マドリードは5月4、7、11、18日とリーグ戦が組まれている。代表チームへの合流前に試合勘を磨くことは可能だが、トップフォームへ取り戻せるかどうかは疑問だ。スペイン国内ではアルベロアの復帰を待望しつつ、リーグ戦で好調なアトレティコ・マドリード所属のファン・フラン(29歳)への期待が高まっている。
センターバックのジェラール・ピケ(27歳)も、4月上旬からサイドラインの外側で過ごしている。バルセロナ所属のセンターバックは、守備だけでなく攻撃でも欠かせない。それだけに、ビセンテ・デル・ボスケ監督(63歳)は彼の回復具合を気にかけている。
オランダは重要な人材を失った。セントラルハーフのケビン・ストロートマン(25歳)が、左膝のケガで長期の戦線離脱を余儀なくされてしまったのだ。ルイス・ファンハール監督(62歳)は、すでにストロートマンのW杯欠場を発表している。攻撃と守備をつなぐパイプ役の不在は、選手層の厚いオランダにも影を落とす。
<世代交代を進めるオーストラリア、チリはエースが絶好調!>
日本と同じアジア代表のオーストラリアは、世代交代を急ぐ。最終ラインの中心だったルーカス・ニール(36歳)が昨年末から無所属となっていたため、アンジェ・ポステコグルー監督(48歳)は彼に代わるセンターバックの人選を進めている。
イングランド1部リーグ(2部相当)のドンカスター・ローバーズと、ニールは3月下旬から1か月の短期契約を結んだ。しかし、36歳のベテランは敏捷さや速さのあるFWを持て余し気味だ。ワールドカップで対戦する3か国のFWと、明らかに相性が悪いのである。
さらに加えて、右サイドからの攻撃を担ってきたロビー・クルーズ(25歳)が、右膝のケガで1月から治療とリハビリを続けている。長く代表で活躍してきたティム・ケーヒル(34歳)、J1の名古屋グランパスに在籍するジョシア・ケネディ(31歳)らベテランの奮闘が、ブラジルでも必要となりそうなオーストラリアである。
2大会連続出場のチリは、得点源のアレクシス・サンチェス(25歳)が絶好調だ。バルセロナ(スペイン)でメッシに次ぐ17ゴールをあげ、キャリア最高のシーズンを過ごしている。
次回の更新分では、グループC、D、Eの最新情報をお伝えしよう。