絶望と閉塞感……その先にあるダークなファンタジー
『ロンサム・ウェスト』
『ロンサム・ウェスト』 撮影:加藤孝
本作『ロンサム・ウェスト』はマクドナーがデビュー後2作目として書いた戯曲。アイルランド独特の空気感と閉塞感をまとい、登場人物4人だけで展開していく物語です。毎日殺し合いのような喧嘩になってしまうどうしようもない兄弟、コールマンとヴァレンを演じるのは堤真一さんと瑛太さん。紅一点・ガーリーンにはオーディションでこの役を射止めた木下あかりさん、そして物語の要を握る飲んだくれの聖職者 ウェルシュ神父には北村有起哉さんが挑みます。
この一筋縄ではいかない戯曲と、多彩で魅力的な出演者をまとめる小川絵梨子さんは2013年度の主だった演劇賞を制覇した印象もある気鋭の演出家。演劇界で今最も注目されているクリエーターの1人である小川さんがどんな化学反応を仕掛けるのか……新緑の季節に注目したい1本です。
◆『ロンサム・ウェスト』
2014年5月3日(土・祝)~6月1日(日) 新国立劇場小劇場THE PIT
作:マーティン・マクドナー 翻訳・演出:小川絵梨子
出演
堤真一 瑛太 木下あかり 北村有起哉
→ 公式HP (詳しいスケジュール、チケット料金等ご確認下さい。)
あなたが立つその世界は揺るぎないものですか?
イキウメ『関数ドミノ』
2009年上演 『関数ドミノ』 (撮影:田中亜紀)
2003年の結成以来、その独特な世界観で演劇界の話題をさらってきた<イキウメ>。スーパー歌舞伎II『空ヲ刻ム者』やPARCO劇場『狭き門より入れ』等、外部でも引っ張りだこの主宰・前川知大さんの最新作は2005年、2009年に上演され好評を博した『関数ドミノ』です。
願ったことが必ず叶う”ドミノ”いう存在をめぐる人々のお話……。身近な生活の裏側に潜む異界を描いてきた前川さんの紡ぐ物語はSF的でもあり、時にオカルトのモードを醸し出し、文学的でありながら絶対に演劇でしか成立しないという特異な世界観。観客は嫌でも舞台上に見える世界の奥にある”その先”を想像します。
”小劇場”と呼ばれるフィールドで活動している劇団が陥りがちな俳優のキャラ固定化がないのもイキウメの魅力の1つ。作品によって自由にその色や佇まいを変える俳優陣にも注目です。初演の05年版では12人、09年版は10人だった出演者が今回の14年版では9人に。同じ作品でありながら登場人物の数まで変わる最新版『関数ドミノ』。どんな”異界”が展開するのか是非劇場で体感して下さい。
◆イキウメ 『関数ドミノ』
2014年05月25日(日)~2014年06月15日(日) シアタートラム
作・演出 前川知大
出演
浜田信也/安井順平/伊勢佳世/盛隆二/岩本幸子/森下創/大窪人衛/
新倉ケンタ/吉田蒼
→ 公式HP(詳しいスケジュール、東京以外の公演地等ご確認下さい。)
如何でしょうか。ん、五月病? ん、ジメジメ?なんてネガティブモードを感じた時は劇場で非日常体験をしてみるのもアリですよ。あなたの心のスイッチ、カツンと切り替わるかもしれません。